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【個人情報保護法1】個人情報保護法ってどんな法律?

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1.ごあいさつ

 はじめまして、アンビシャス総合法律事務所の弁護士田上淳一と申します。4年ほど前に個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」といいます)に関するセミナーを担当させていただいたことがきっかけで、個人情報保護法を取り扱う機会が増え、現在ではライフワークの一つとなっています。

 そこで、これから合計6回にわたって、個人情報保護法をテーマに連載をさせていただきます。そもそも個人情報保護法とはどのような法律なのか、直近の個人情報保護法の改正(2022年4月1日全面施行)に伴いどのような対応をしなければならないのか、そのほかの個人情報保護法に関する重要なポイントについて、なるべくかみくだいてお伝えできればと考えています。

2.個人情報保護法ができるまで

 個人情報保護法は、2003年5月23日に成立し、国や地方公共団体を対象とする部分は、同時に施行されました。一般企業を対象とする部分は、約2年後の2005年4月1日から施行されました。なので、法律が成立してから20年ほどしか経っていないとても若い法律なのです。私たちにとって身近な法律の一つである民法が1898年に成立し、120年以上が経っていることと比べると、そのことがとても実感できるのではないかと思います。

 私自身を含め、小さな頃には個人情報保護という概念はあまりなかったという方が多いのではないでしょうか。記憶を遡ってみても、学校の連絡網や卒業アルバムでは、氏名・生年月日・住所・電話番号といった個人に関する様々な情報が無防備にも公表されていたことが思い出されます。

3.個人情報保護法ってどんな法律

 早速ですが、個人情報保護法という言葉を耳にしたことがない人はいないと思いますが、どのような法律なのかご存知でしょうか。おそらく「個人情報を守るための法律」とお考えの方が多いのではないでしょうか。「個人情報を守ること」は正解ですが、それだけだと個人情報保護法の要点が半分くらい抜け落ちてしまっています。それでは、抜け落ちてしまっている半分とは、いったいどのようなものなのでしょうか。

 多くの法律では「目的」と題する条文(第一条に定められていることが多いです)にどのような目的の法律なのかが書いていますので、個人情報保護法の目的(第一条)を見てみましょう。要約すると「個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであることその他の個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする」と定められています。「個人の権利利益を保護すること」はもちろん目的なのですが「個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであることその他の個人情報の有用性に配慮」することと定められています。

 2003年に制定された当時の個人情報保護法では、これに対応する部分では「個人情報の有用性に配慮」するとしか記載されていなかったことと比較すると、現在の個人情報保護法が個人情報の適性かつ効果的な利活用により重点を置いていることがわかります。

4.個人情報の適正かつ効果的な利活用に重点が置かれた経緯

 このように「個人情報の適正かつ効果的な活用」が定められるようになったのは、情報通信技術の著しい進展によるものだといわれています。情報通信技術の著しい進展により、瞬時に大量の情報を処理することができるようになり、今まではできなかった方法での個人情報の利活用ができるようになり、情報を巡る社会情勢や経済情勢が変化したことは、身をもって体感されているはずです。特に消費者を取引の相手方としている場合は、顧客の情報や購買動向をマーケティングに利活用されている企業も多いのではないでしょうか。

5.継続的なフォローアップ

 次回以降は、個人情報保護法の改正に伴う対応やそのほかの重要なポイントをお伝えしていきますが、数年後には大きく内容が変わってしまっているかもしれません。というのも、個人情報保護法(附則)では、3年ごとに国際的動向、情報通信技術の進展、個人情報を活用した新たな産業の創出及び発展の状況等を踏まえて、検討を加え、必要がある場合は所要の措置を講ずると定められています。

 直近では、2020年に個人情報保護法の改正が行われ、その後段階的な施行を経て、2022年4月1日には全面施行されています。今後も、令和5年春頃には早くも見直しが始まることが見込まれてもあります。
 
 昔は、小規模取扱事業者の特例(取り扱う個人情報が5000人以下の場合は、個人情報保護法の規制を受けないというものです)があったのですが、現在では、この特例も削除されており、全ての企業にとって個人情報保護法への対応は決して避けて通ることができない状況になっています(もちろん、私や当事務所を含めてです)。そこで、まずは個人情報保護法の改正を含め全体像を把握していきましょう。そして、対応が必要な事項を確認し、一歩ずつ対応を進めていきましょう。


弁護士 田上 淳一