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【消費者契約法】消費者への配慮に注意が必要です

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1. 公布日・施行日

 公布日:2022年6月1日

 施行日:2022年6月1日

 ※施行日前の消費者契約法を現行法といい、施行日後の消費者契約法を改正法といいます
 

2. 知っておくべき改正ポイント

(1) 取消権の追加

(2) 解約料の算定根拠説明の努力義務

(3) 免責範囲が不明確な条項の無効

(4) 情報提供に関する事業者の努力義務の拡充


3. そもそも消費者契約法とは?

 消費者契約法は、事業者と消費者との間の契約に適用される法律で、民法の特別法です。不当な勧誘による契約の取消し等によって消費者保護を図っています。

4. 改正法の概要

(1) 取消権の追加(改正法4条3項)

 □ 改正法

 取消しできる類型に以下が追加されます。

 ① 勧誘することを告げずに退去困難な場所へ同行し勧誘

 例:勧誘することを告げずに、車で自力で帰ることができない遠方に連れていき、勧誘を行う

 ② 威迫する言動を交え、相談の連絡を妨害

 例:友人に相談すると言ったときに、「相談すると現住所に住めなくする」等と威迫し相談を妨害する

 ③ 契約前に目的物の現状を変更し、原状回復を著しく困難とする

 例:契約する前に商品の実物に触れるためとして、購入予定の商品パッケージを事業者が開封してしまう

 ■ 現行法による不都合

 ①については、退去妨害(現行法4条3項2号)の類型があったものの、退去の意思を示していない場合には該当しなかったため、取消すことができませんでした。

 ②については、第三者に相談を求めようとしたときに、それを妨げられ、契約締結に至っても取消すことはできませんでした。

 ③については、契約を締結した場合に事業者が負う義務を、契約前に実施することを取消しの対象とする規定が存在していましたが(現行法4条3項7号)、実施するのではなく、契約の目的物の現状を変更することで、実施した場合と同様に、契約が進んだように見せかけ、消費者に対して、契約を締結するしかないと動揺させるような状況を作出し、契約締結に至った場合に取消すことはできませんでした。

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(2) 解約料の算定根拠説明の努力義務(改正法9条2項)
 
 □ 改正法

 事業者は、消費者に対し、契約解除に伴い損害賠償・違約金を請求する場合に、消費者から説明を求められたときは、損害賠償・違約金の算定の根拠の概要を説明するよう努めなければなりません。

 ■ 現行法による不都合

 改正前は、解約時の解除料やその説明に関する規定は存在していないため、事業者が自由に解約料を設定できます。他方で、解約料等は消費者にとって大きな関心事であり、事業者と消費者の間に、情報の格差があるため、よく分からないまま契約締結に至ることがあります。

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(3) 免責条項無効の規定の新設(改正法8条3項)

 □ 改正法

 事業者の債務不履行・不法行為により生じた損害賠償責任を一部免除する規定は、事業者の重大な過失を除く過失による行為にのみ適用されることを明らかにしなければ、無効となります。

つまり、重過失以外の過失の場合だけ責任を免除することが明らかでないと、その規定は無効となります。

例えば、

「法律上許される限り、当社は損害賠償責任を負わない」のような規定は無効とされる可能性があります。

 ■ 現行法による不都合

 故意・重大な過失がある場合に、損害賠償責任の一部を免除する条項は無効とされていますが、実務上は、「法律上許される限り」「事業者の責任を免除する。ただし、法令に反する場合はこの限りではない」のような不明確な文言が使われており、責任の範囲がはっきりせず、消費者が十分に認識しないまま契約に至ります。

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(4) 情報提供に関する事業者の努力義務の拡充(改正法3条1項2号、4号等)

 □ 改正法

 契約解除時に必要な情報を提供、勧誘時に年齢や心身も踏まえて情報提供すること等に努めなければならない。

 ■ 現行法による不都合

 勧誘時の説明については、定められていますが、考慮要素が不十分であり、また、解約時の情報提供はなく、事業者と消費者との間に情報格差があります。

5.まとめ

 今回の改正により、取消事由や無効となる場合が拡充し、努力義務が追加されたことから、契約書の見直しや社内での研修や業務フローの見直しが必要となります。

 例えば、取消権との関係では、勧誘目的を告げるようにすること、相談・連絡ができる時間を設けること等の実務上の対応が必要です。

 そのため、不安のある方は、お気軽にご相談ください。


弁護士 森谷 拓朗