2018年春から、帝国ニュース【北海道版】で「弁護士に学ぶ!成長のための企業法務」というタイトルで毎月1回連載させていただいています。
ここでは、同連載でこれまで取り上げたテーマを振り返りつつ、法改正や実務動向の変化を踏まえて、要点のみを改めて端的に伝えていきます。
今回のテーマは↓です。
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M&Aの注意点(株式譲渡の場合)
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1. 株式譲渡によるM&Aの手続
株式譲渡によるM&A手続の一般的な流れを図表に纏めましたので、ご確認ください。

①M&Aの検討開始、②外部協力者の選定と契約の締結、③企業価値評価、④売却候補先/買収候補先の絞込みと選定、⑤売却候補先/買収候補先と秘密保持契約の締結、⑥基本条件の交渉、⑦基本合意書の締結、⑧詳細調査(デューディリジェンス)、⑨詳細調査の結果に基づく交渉、⑩最終合意書の締結、⑪M&A手続の実行といった流れで手続が進んでいくことになります。
この一連の手続に要する期間は、案件の大小や、当事者の意向、当事者の置かれている立場や状況等によって長短はありますが、早くて3か月、長ければ2年くらいといった感じです。
2. トラブルを回避するために注意すべき場面
注意すべきポイントは、一連の流れのうち契約を締結する場面、すなわち「②外部協力者の選定と契約の締結」「⑤売却候補先/買収候補先と秘密保持契約の締結」「⑦基本合意書の締結」「⑩最終合意書の締結」の4つです。
(1)外部協力者の選定と契約の締結
外部協力者から提示された契約書を十分に確認することなく契約を締結してしまい、後からトラブルや紛争に発展する例があります。
(2)売却候補先との秘密保持契約の締結
全てのM&Aの手続が成約まで至るわけではありません。そのため、途中で破談になった場合にも十分対応できる秘密保持契約を締結しておく必要があります。
(3)基本合意書の締結
基本合意書には、大まかな取引条件が記載されることになりますが、大きく分けて金銭面と条件面を確認する必要があります。
(4)最終合意書の締結
最終合意書で、特に買い手側が最も関心がある条項は、譲渡対価に関する部分です。ただ、それ以外にも、適切な表明保証条項が定められているか、最終合意書の締結日から譲渡の実行日までの間に重要な経営判断や資産の譲渡を禁止する条項を設けているか、譲渡実行後の一定期間は売り手側が競業を行うのを禁止する条項を設ける必要はあるか、譲渡実行後の業務の引き継ぎに関する条件は適切に定められているか等、規定すべき条項は沢山ありますので、それぞれの項目を慎重に確認してください。
弁護士 奥山 倫行
