1. 公布日・施行日
公布日:2021年6月16日
施行日:公布日から2年以内
※公布日前の特定商取引法を現行法といい、公布日後の特定商取引法を改正法といいます。
2. 知っておくべき改正ポイント
消費者の承諾を得た場合、書面交付が電磁的方法(メールなどが想定)でも可能
3. そもそも特定商取引法とは?
(1) 特定商取引法は、訪問販売、電話勧誘販売、エステ・学習塾などの特定継続的役務提供など、問題になりやすい取引類型を対象に、事業者による違法・悪質な勧誘行為などを防止し、消費者の利益を守ることを目的とする法律です。
この法律は、以下の態様の取引に適用される可能性があります。
| 1 | 訪問販売 | キャッチセールス、アポイントメントセールスといった自宅などに訪問して、商品や権利の販売又は役務の提供を行う契約をする取引 |
| 2 | 通信販売 | 新聞、雑誌、インターネットなどで広告し、郵便、電話などの通信手段により申込みを受ける取引 |
| 3 | 電話勧誘販売 | 電話で勧誘し、申込みを受ける取引 |
| 4 | 連鎖販売取引 | 個人を販売員として勧誘し、更にその個人に次の販売員の勧誘をさせるという形で販売組織を連鎖的に拡大して行う商品、役務の取引 |
| 5 | 特定継続的役務提供 | エステティック、語学教室、学習塾など、一定期間を超える期間にわたり、一定金額を超える対価を受け取ってサービスを提供する取引 |
| 6 | 業務提供誘引販売取引 | 「仕事を提供するので収入が得られる」という口実で消費者を誘引し、仕事に必要であるとして、商品などを売って金銭負担を負わせる取引 |
| 7 | 訪問購入 | 購入業者が、店舗など以外の場所(消費者の自宅など)で契約を締結などして行う物品の購入のこと |
(2) 特定商取引法には、上記のような目的に由来する、特別なルールが定められています。
一つは、氏名等の明示義務や、広告規制、書面交付義務といった行政上の規制です。行政上の規制に違反する場合は、行政処分や罰則などの対象となります。
二つは、民事上のルールです。こちらは、クーリング・オフや、中途解約権、損害賠償額の制限など、一般的な民事上のルールを修正するような形になっています。
(3) 今回の改正は、上記の行政上のルールのうち、書面交付義務の規定に関するものです。
4. 改正の概要
(1) 改正前(現行法4条1項など)
例えば、特定商取引法の対象となるエステティック業においては、添付の画像のような契約書が用いられることがありますが、これまでは、書面を直接交付する必要がありました。


(2) 改正後(改正法4条2項など)
消費者の事前の承諾が得られれば、事業者が交付すべき契約書面などについて、電磁的方法によることが可能となりました。
消費者の事前の承諾の取得方法や交付に代わる電磁的方法の具体的な態様としては、電子メールやチャットアプリ等のツールを用いた双方向のやり取りが考えられます。
この点については、具体的な事例の集積により、今後の運用に影響を与えるものと考えられます。
5.まとめ
今回の改正により、BtoC事業を行う企業にとっては、電磁的方法でのやり取りが可能となる一方で、電磁的方法で行うことについて承諾を得る体制を整えることが重要になってきます。
また、現状として明らかになっていない具体的な方法・様式がどのようなものになるか注意が必要です。
体制作りや消費者とのやり取りに不安がある方、今後の法改正の動向が気になる方は、お気軽にご相談ください。
弁護士 森谷 拓朗
