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弁護士に学ぶ!成長のための企業法務~メルマガ版~vol.7(著作権法(引用))

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  2018年春から、帝国ニュース【北海道版】で「弁護士に学ぶ!成長のための企業法務」というタイトルで毎月1回連載させていただいています。

 ここでは、同連載でこれまで取り上げたテーマを振り返りつつ、法改正や実務動向の変化を踏まえて、要点のみを改めて端的に伝えていきます。

今回のテーマは↓です。

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 著作権法(引用)

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1. 他人の文章・画像・動画の流用には注意が必要

 自社のWebサイトに、他人の文章や画像や動画を無断で掲載した場合には、適切な引用と認められない限り、著作権侵害に該当する可能性があります。適切な引用と認められるためには、注意すべきポイントがありますので、本稿の内容をご確認頂き、対応を進めて下さい。


2.「適切な引用」とは?

 自社のWebサイトやブログ上に、インターネット上に存在する他人の文章や画像や動画を転用したり紹介したりする場合に「他人の著作権を侵害しているのではないか?」と不安になる人も多いと思います。


 他人の著作物を無断で使用してしまうと、原則として著作権侵害になります。「原則として」というのは、どんな場合でも著作権者の許諾を得ながら表現行為を行わなければならないとしてしまうと、著作権法の目的である文化の発展を阻害してしまうことになりかねないので、著作権法は、例外として著作権者の許諾を必要としない利用形態を規定しています。
 その内の一つが、著作権法の「引用」のルールです。著作権法第32条第1項は「公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。」と定めていて、このルールに則っている限りは、著作権者の許諾を得なくても、他人の著作物を利用することが認められています。


3.注意すべき5つのポイント

 著作権法第32条第1項は「公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるもの」でなければ引用としては認められないと定めていますが、この要件を満たすためのポイントは以下のとおりです。

(1)主従関係が明確であること

 まず、現在作成しているコンテンツの中で、自分が作ったオリジナル部分が「主」で、引用部分があくまで「従」の位置づけである必要があります。例えば、分量的に、引用部分の方が多く、オリジナル部分が少なかったり、内容的に、引用部分の方がメインで、オリジナル部分が捕捉に過ぎなかったりすると、適切な引用とは認められません。具体的には、引用部分の占める割合は1割~2割程度に抑え、オリジナル部分で8割~9割程度にするくらいの感覚で考えて頂くのが安全です。

(2)引用部分が他とはっきりと区別されていること

 次に、引用部分がオリジナル部分と明確に区別されて表現されていなければなりません。具体的には、引用部分を「○○○○」とか“〇〇〇〇”のような形で表現したり、引用部分の文字のフォントを変えたり、引用部分の文字の色を変えたり、引用部分の太字を太字や斜字で表現したり、引用部分の背景色を変えたり、引用部分の枠で囲んだりしてする必要があります。決められたやり方があるわけではありませんので、様々な工夫の余地があるところですが、要はその文章等を見た人が「あ、ここは引用部分だ」と一目でわかるように表現しなければならないということです。

(3)出典元が記載されていること

 また、引用部分の表現物をどこから引っ張ってきたのか、情報源を明示しなければならないとされています。具体的には、書籍の内容を引用したのであれば「著者名・タイトル・出版社・出版年」等を表記したり、Webサイトから引用したのであれば、「WebサイトのタイトルやURL」を表記したり、リンクを張らせて貰ったりする必要があります。

(4)引用する必要性があること

 「本当に引用する必要性があるのか」という点も注意が必要です。自分がコンテンツを制作する上で、他人の著作物を引用しなければ説明できないような状況がある合理的な理由が必要になります。具体的には、どうして引用したのかの理由をオリジナル部分の本文に記載しておくと良いと思います。

(5)改変しないこと

 引用部分の著作権者には同一性保持権といって、著作権者の許諾なく、勝手に著作物を改変されない権利があります。そのため、引用に際しても、引用部分を勝手に改変することなくそのまま引用しなければならないということに注意して下さい。


4.信用性の高いWebサイトの構築を

 著作権を侵害してしまった場合には、民事事件や刑事事件に発展する可能性がありますが、現実的にその種のトラブルに発展するのは、余程、悪質性の高い事例に限られると思います。そのため、民事事件や刑事事件に発展すること以上に注意しなければならないのは、Webサイトの信用性が、実際の企業の信用性に直結するという社会的な側面です。

 どんなに良い情報を掲載していても、またどんなに多くのユーザー数を獲得していても、他人の著作権に対する配慮を欠くようなWebサイトは信用性を欠き、ひいては瞬く間に自社や自社の商品の社会的評価を低下させかねませんので、他人の著作物を利用する際には、本稿で紹介させて頂いた内容を参考にして、他人の権利を侵害しないような対応を心掛けてください。

弁護士 奥山 倫行