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【宇宙法3】宇宙活動法

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1.はじめに 

 前回は、宇宙政策に関する初めての国内法である、2008年に制定された「宇宙基本法」の概要を紹介させていただきました。

 本稿では、宇宙基本法の制定後、2016年11月に公布された「人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律」(宇宙活動法)と「衛星リモートセンシング記録の適正な取扱の確保に関する法律」(衛星リモセン法)の2つの国内法(両法を「宇宙二法」と呼ぶことがあります)のうち、宇宙活動法について説明します。

2.宇宙活動法が制定されるまでの背景 

 我が国が1967年に批准した「月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約」(いわゆる宇宙条約)の第6条では、「政府機関によって行われるか非政府団体によって行われるかを問わず、国際責任を有し、自国の活動がこの条約の規定に従って行われることを確保する国際的責任を有する」と規定され、宇宙空間における非政府団体の活動に対し、国の許可と継続的監督が求められています。
 また、宇宙基本法35条では、「政府は、宇宙活動に係る規制その他の宇宙開発利用に関する条約その他の国際約束を実施するために必要な事項等に関する法制の整備を総合的、計画的かつ速やかに実施しなければならない。」との内容が規定されています。

 このように、日本が批准している宇宙諸条約の履行の担保、さらに安全保障や宇宙産業振興(民間事情の推進)のため、これらの条約とも整合する国内法の整備は急務とされ、宇宙活動法が制定されました。


3.宇宙活動法とは

 宇宙活動法は、主に次の3つの制度について、規定しています。以下では、3つの制度の内容を説明させていただきます。

 ① 人口衛生などの打上げに関する許可制度(打上げ許可)


 ② 人工衛星の管理に関する許可制度(衛生管理許可)

 
 ③ 人工衛星やロケットの落下などで生じる第三者損害の賠償制度(第三者賠償制度)


4.①人口衛生などの打上げに関する許可制度
 
 日本国内からのロケット・人工衛星等の打上げや、打上げ施設に関する許可制度です。国内の施設又は日本国籍を有する船舶や航空機に搭載された打上施設を用いて人工衛星等を打ち上げる場合は、その都度、内閣総理大臣の許可を受ける必要があります(法4条)。
 
 具体的な打上げの許可要件は法6条に定められており、大まかに説明すると、(a)安全なロケットを、(b)安全な施設から、(c)安全な方法で打ち上げることが確認され、(d)搭載する衛生の利用目的・方法等が宇宙諸条約及び宇宙基本法の理念に合致していることが求められます。

なお、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が行う人工衛星等の打上げについては、これまでの実績に鑑み、申請手続きが簡略化されています(法19条)。


5.人工衛星の管理に関する許可制度
 
 人工衛星を管理する者に対する許可制度です。人工衛星を打上げに成功したとしても、誰でも管理してよいわけではなく、安全を確保するためにも、人工衛星を管理するにも許可が必要です。

 具多的には、日本国内に所在する人工衛星管理設備(2条6号)を用いて、人工衛星の管理(人工衛星の位置、姿勢及び状態を把握し、これらを制御すること)する場合には、当該人工衛星ごとに、事前に内閣総理大臣の許可を受けなければなりません(20条)。


6.第三者損害の賠償制度

 打上げ失敗等によるロケットが落下するなどして第三者に損害が生じた場合、その被害が甚大となることが想定されます。そこで、宇宙活動法では、賠償責任の所在や損害賠償担保措置に関する事項が規定されています。

(1)打上げ実施者の第三者賠償制度

 ロケットの打ち上げ行為の最中(衛星分離後か否かを問わない)にロケットが地上、地中、飛行中の航空機等の飛翔体に落下し、物理的な損害を与えた場合には、打上げを行った者が、過失の有無を問わず、第三者に対する賠償責任(無過失責任)を負います(2条8号、35条)。

また、打上げ実施者には、所定の第三者損害賠償責任保険に加入するか、所定の金額を供託する義務が課せられています(9条)。さらに、保険等で埋めることができない巨額な損害が発生した場合には、政府保障の制度もあります。

(2)衛生管理者の第三者賠償制度

 管理中の人工衛星が地表に落下するなどして損害が生じた場合には、上記同様に衛生管理者が無過失責任を負います(2条8号、53条)。
 もっとも、打上げ時とは異なり、衛生が地上に落下してくる確率が極めて低いことから、衛生管理者には、上記(1)で述べた損害賠償担保措置は求められていません。

7.小括

 本稿では、宇宙活動法の概要を紹介させていただきました。宇宙活動法は、宇宙条約の履行と宇宙活動に関する民間事業を推進するための制度のインフラ整備を目的として制定された法律ですが、ロケットや衛星等が宇宙空宇宙活動間で第三者に与えた損害についての賠償責任については規定がないなど、今後の課題は残されています。今後の法整備の動向に注目していきたいです。

弁護士 日西 健仁