当事務所のHPはこちらです。https://ambitious.gr.jp/

知的財産~世界の特許出願・登録状況~

この記事は約3分で読めます。

1.特許について

  「知的財産」の全体について2月のメールマガジンで紹介しました。

 知的財産の中でも代表的なものである特許とは、発明について国がその発明を独占的に利用する権利を付与する制度です。なお、発明とは何かについて説明しようとすると長くなってしまいますので、ここでは、(正確とはいえないものの)従来にはなかった新しい技術くらいのイメージで考えていただければ大丈夫です。

 新しい技術を生み出した人は、それが商売等にとって有用であれば、誰にも教えないで自分だけで活用して、商売上の利益を独占したいと思うのが当然です。しかし、新しい技術が社会に知れ渡らずにいると、その新しい技術を基礎として更に優れた新しい技術を生み出すことが困難になり、社会的に損失となります。そこで、国が、新しい技術を国に出願させて世に公開するようにして技術の上に更に新しい技術が生まれるという産業発展を推進し、その新しい技術を出願した人には特許権というその技術を一定期間独占的に利用する権利を与えるというのが特許制度です。

2.特許と政策

 そして、国内企業が国内外において多くの特許出願をし、特許権を保有しているということは、国の技術力・産業力の高さを示し、国力の一部となります。

 現在のように、情報交流及び国際交流が活発かつ容易な時代には、新しい技術は瞬く間に国内外企業に模倣されてしまいます。戦後の高度成長期の日本社会は、その勤勉な性質により欧米の技術の良いところを取り入れて、あっという間に世界の経済大国に追いつきました。欧米からすれば、日本はモノマネによって経済成長を遂げたと捉えられていました。

 他方、アメリカでは、1970年代に産業力が低下しつつありました。細かい経緯は省略しますが、アメリカは、特許権の保護を強化することにより、産業力の回復を図る政策をとるようになりました(プロパテント政策といいます)。その結果、特許権を侵害しているか否かという米国での訴訟において、特許権者に有利な判決がいくつも打ち出されるようになり、米国で訴訟を提起され大変痛い思いをした日本の大企業はいくつもあります。

3.世界の特許出願・登録状況

 このように、特許出願・登録状況は各企業だけではなく国力(産業力)の一部となっています。

 そして、日本の特許庁は、2023年7月、「特許行政年次報告書2023年版」を公表しました( https://www.jpo.go.jp/resources/report/nenji/2023/index.html )。

 報告書によると、日本の特許庁での2022年出願件数は約28.8万件で前々年、前年と同じ程度ですが、過去15年では減少傾向となっています。なお世界の特許出願件数は、2022年約340万件です。

 2021年における世界での特許登録件数は約176万件ですが、居住国別の件数は1位中国(約64万件)、2位アメリカ(約30万件)、3位日本(28万件)、4位韓国(16万件)、以下ドイツ、フランス、イギリスの順となっています。 また、出願された特許庁は中国が圧倒的に多くなっており、上記の2022年世界全体340万件のうち約半分の約162万件となっています。つまり、中国では国内企業を中心に多数の特許出願が中国特許庁に出され、毎年多数の特許権が国に認められており、技術力という意味での国力を急速に増していることがわかります。


弁護士・弁理士 安藤 誠悟