1. 公布日・施行日
公布日:2023年月6月14日
施行日:2024年4月1日
※施行日前の商標法を現行法といい、施行日後の商標法を改正法といいます。
2. 知っておくべき主な改正ポイント
① 先行登録商標の権利者の同意があれば両商標の併存登録が認められること(改正法4条4項)
② 他人の氏名を含む商標の登録要件が緩和されること(改正法4条1項8号)
3. 改正の概要
(1)先行登録商標の権利者の同意による両商標の併存登録
◆現行法による状況
現行法では、先に商標が登録されている場合、同一・類似の指定商品・役務について、当該商標と同一又は類似の商標は登録が拒絶されます(現行法4条1項11号)。これは、商標権の効力が同一・類似の指定商品・役務について、同一・類似の商標を使用する行為に及ぶからです(現行法25条・37条1号)。
上記規制の趣旨は、①先行登録商標の権利者の保護及び②商品・役務の出所混同の防止にあります。
もっとも、諸外国では、先行登録商標に抵触する商標が出願された場合でも、先行登録商標の権利者の同意があれば両商標の併存登録を認める制度が存在しており、国際制度との調和や事業者の需要を考慮して、日本でも法改正することになりました。
◆改正法の内容
改正法では、①先行登録商標の権利者の承諾を得ていること及び②先行登録商標との間で出所混同のおそれがないことの要件を充足した場合、同一・類似の指定商品・役務について、当該商標と同一又は類似の商標の登録が可能となります。
なお、上記登録がされた場合、生じうる不都合に対応できるよう以下の規定も整備されました。
- 一方の商標権者は、他方の商標権者に混同防止表示を付すよう請求することができる(改正法24条の4第1号)
- 一方の商標権者が不正競争の目的で出所混同を生じさせるような商標の使用をしたときは、何人も商標登録の取消審判の請求ができる(改正法52条の2)
(2)他人の氏名を含む商標の登録要件の緩和
◆現行法による状況
現行法では、「他人の氏名」を含む商標について、他人の承諾を得ない限り、商標登録をすることができません(現行法4条1項8号)。
上記規制の趣旨は、他人の人格的利益の保護にあります。
もっとも、創業者やデザイナー等が自己の氏名をブランド名に使いたい場合、同姓同名の他人がいたりするため、その全員の承諾を得る必要があり、課題がありました。
そのため、日本でも法改正することになりました。
◆改正法の内容
改正法では、「他人の氏名」であっても、商標の使用をする商品・役務の分野で需要者に広く認識されていない氏名であれば商標登録が可能となります。
なお、政令で定める要件に該当しないものは商標登録できないため、今後制定される政令の内容に注意が必要です。

4.まとめ
今回の改正により、登録できる商標の幅が増えますので、今後の経営計画を考えるにあたりご検討いただければと存じます。政令については、今後動きがある部分なので疑問点や不明点がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
弁護士 森谷 拓朗
