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【フリーランス保護新法】フリーランスとの取引について義務が課される場合があります!

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1. 公布日・施行日

 公布日:2023年月4月28日

 施行日:公布日から1年6ヶ月を超えない時期

 ※特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(=フリーランス保護新法)を法といいます。

2. 知っておくべきポイント

  1. 法の対象は(特定)業務委託事業者と特定受託事業者との間の業務委託に係る取引であること(各定義は後述します)
  2. 業務委託事業者は給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法により明示しなければならないこと(法3条)
  3. 特定業務委託事業者は、上記⑵の義務に加えて、報酬の支払期日(法4条)、募集情報の的確表示義務(法12条)、ハラスメント対策に係る体制整備義務(法14条)が課されること
  4. 特定業務委託事業者でかつ継続的に発注する場合は、上記⑶の義務に加えて、遵守すべき禁止事項(法5条)、育児介護等と業務の両立に対する配慮義務(法13条)、中途解除等の事前予告義務(法16条)が課されること
(出典:内閣官房新しい資本主義実現本部事務局 公正取引委員会 中小企業庁 厚生労働省「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)説明資料」001115385.pdf (mhlw.go.jp)


3. 法の概要

(1)対象となる当事者・取引の定義(法2条)

定義意味条文
当事者特定受託事業者業務委託の相手方である事業者であって、次のいずれかに該当するもの ①個人であって、従業員を使用しないもの ②法人であって、一の代表者以外に他の役員(理事、取締役、執行役、業務を執行する社員、監事若しくは監査役またはこれらに準ずる者をいう)がなく、かつ、従業員を使用しないもの法2条1項
特定受託業務従事者特定受託事業者である個人及び特定受託事業者である法人の代表者法2条2項
業務委託事業者特定受託事業者に業務委託をする事業者法2条5項
特定業務委託事業者特定受託事業者に業務委託をする事業者であって、従業員を使用するもの法2条6項
取引業務委託事業者がその事業のために他の事業者に ①物品の製造(加工を含む)又は情報成果物の作成を委託すること ②役務の提供を委託すること(他の事業者をして自らに役務の提供をさせることを含む)法2条3項

※ 「従業員」には、短時間・短期間等の一時的に雇用される者は含まれません。
法は(特定)業務委託事業者と特定受託事業者との間の業務委託に係る取引に適用されます。

(2)業務委託事業者に課される義務

 業務委託事業者に課される義務は取引条件の明示義務(法3条)です。

 具体的には、①特定受託事業者の給付の内容、②報酬の額、③支払期日④その他の事項(受託・委託者の名称、業務委託をした日、給付の提供場所、給付の期日などを想定しています)を、書面又は電磁的方法により明示しなければなりません(法3条1項)。

(3)特定業務委託事業者に課される義務

 上記⑵の義務に加えて、以下の義務が課されます。

 ア 報酬の支払期日(法4条)

  •  原則、①発注した物品等を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で、報酬の支払期日を定めてそれまでに支払わなければなりません。
     例外として、②支払期日が定められなかった場合は給付を受領した日(役務を提供した日)に、③受領日から起算して60日より長い支払期限が定められた場合は給付を受領した日(役務を提供した日)から60日を経過する日までに支払わなければなりません。
(出典:内閣官房新しい資本主義実現本部事務局 公正取引委員会 中小企業庁 厚生労働省「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)説明資料」001115385.pdf (mhlw.go.jp)

 
 イ 募集情報の的確表示義務(法12条)

  •  広告等により、特定受託事業者の募集情報(「委託者の情報に関する事項」「報酬に関する事項」「給付の場所や期間・時期に関する事項」を想定しています)を提供するときは、当該情報について、①虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならず、②正確かつ最新の内容に保たなければなりません。

 ウ ハラスメント対策に係る体制整備義務(法14条)

  •  ハラスメント行為により特定受託事業者の就業環境を害することのないよう相談対応のための体制整備その他の必要な措置(ハラスメントを行ってはならない方針の明確化・周知啓発、相談に適切に対応できる体制の整備、ハラスメント発生時の適切な対応)を講じなければならない。
     特定業務委託事業者は、特定受託事業者がハラスメントに関する相談を行ったこと等を理由として不利益な取扱いをしてはいけません。

(4)特定業務委託事業者でかつ継続的に発注する場合に課される義務

 上記⑵及び⑶の義務に加えて、以下の義務が課されます。

 ア 遵守すべき禁止事項(法5条)

 以下の事項が定められています。

 禁止事項
特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく受領を拒むこと(1項1号)
特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく報酬を減額すること(1項2号)
特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく返品を行うこと(1項3号)
通常支払われる対価に比べて著しく低い報酬の額を不当に定めること(1項4号)
正当な理由なく自己の指定する物の購入・ 役務の利用を強制すること(1項5号)
 利益を不当に害してはならない事項
自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること(2項1号)
特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく内容を変更させ、又はやり直させること(2 項2号)

 イ 育児介護等と業務の両立に対する配慮義務(法13条)

  •  特定業務委託事業者は、継続的業務委託について、特定受託事業者からの申出に応じて、特定受託事業者が育児介護等(妊娠、出産を含みます)と業務を両立できるよう、必要な配慮をしなければなりません。

 ウ 中途解除等の事前予告義務(法16条)

  •  特定業務委託事業者は、継続的業務委託を中途解除したり、更新しないこととしようとする場合には、特定受託事業者に対し、少なくとも30日前までに、その旨を予告をしなければなりません。
     なお、特定受託事業者に契約不履行や不適切な行為があり業 務委託を継続できない場合は予告不要です。
     予告の日から契約満了までの間に、特定受託事業者が契約の中途解除や不更新の理由の開示を請求した場合には、特定業務委託事業者は、これを開示しなければなりません。
(出典:内閣官房新しい資本主義実現本部事務局 公正取引委員会 中小企業庁 厚生労働省「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)説明資料」001115385.pdf (mhlw.go.jp)

(5)義務違反の場合

 上記義務に違反した場合、行政機関は、その内容に応じて、違反事業者に対し、①報告徴収・立入検査、②指導・助言、③勧告、④勧告に従わない場合の命令・公表 といった対応をとることがあります(法18条ないし法20条及び法22条)。
 また、④命令違反の場合には50万円以下の罰金が科される場合があります(法24条ないし法26条)。


4.まとめ

 法の新設により、これまで規制がなかった取引に規制が課され、委託者側には義務が課されます。そのため、これまでの運用ルールを見直す必要がありますので、ご検討ください。また、義務に違反した場合には、公表や罰金といった重い処分が行われる可能性もあるため、ご注意ください。運用ルールを検討するにあたって疑問点や不明点がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

弁護士 森谷 拓朗