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弁護士に学ぶ!成長のための企業法務~メルマガ版~vol.14(リスクマネジメント(受動喫煙防止対策))

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  2018年春から、帝国ニュース【北海道版】で「弁護士に学ぶ!成長のための企業法務」というタイトルで毎月1回連載させていただいています。

 ここでは、同連載でこれまで取り上げたテーマを振り返りつつ、法改正や実務動向の変化を踏まえて、要点のみを改めて端的に伝えていきます。

今回のテーマは↓です。

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 リスクマネジメント(受動喫煙防止対策)

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 2018年7月に健康増進法の一部を改正する法律が成立しています。これによって、望まない受動喫煙を防止するための取り組みがマナーからルールに変わりました。すでに対応済みの事業者が殆どだと思いますが、改めてご確認ください。


1. 健康増進法改正の趣旨

 この改正は、望まない受動喫煙を防止するために、多数の者が利用する施設や場所の区分に応じて、当該施設等の一定の場所を除いて喫煙を禁止するとともに、当該施設等の管理について権限を有する者が講ずべき措置ついて定めるものです。国や地方公共団体の責務等も定められていますが、多くの事業者の方にとって関心があるのは、どのような施設で、どのような規制がされているかだと思いますので、以下ではこの点を中心に説明させていただきます。


2.規制の内容

(1)学校・病院・児童福祉施設・行政機関の庁舎等

 多数の人が利用する施設のうち、受動喫煙により健康を損なうおそれが高い子ども、患者、妊婦が主に利用する学校、児童福祉施設、幼稚園、保育所、大学、病院診療所、助産所、施術所、薬局、行政機関の庁舎等については、屋内であっても、屋外であっても禁煙になります。ただし、屋外の場所の一部のうち受動喫煙を防止するために必要な措置がとられた場所に、喫煙場所(特定屋外喫煙場所)を設置することができるとされています。これらの施設では、喫煙禁止場所に灰皿を設置してはいけませんし、もし違反者がいれば喫煙の中止を求めたり、退出を求めたりしなければなりません。

(2)オフィス・事業所等

 多くの人が利用する全ての施設、事務所、工場、ホテル、旅館、旅客運送事業船舶・鉄道、その他全ての施設は、原則として屋内禁煙となり、ホテルや旅館の客室内や喫煙専用室内等でのみ喫煙が可能とされます。なお、当面の間、設置可能な喫煙室として、喫煙専用室と加熱式たばこ専用喫煙室の2つが挙げられています。喫煙専用室では、たばこの喫煙が可能ですが、飲食等の提供はできないとされています。加熱式たばこ専用喫煙室では、加熱式たばこに限定して喫煙が可能ですが、飲食等の提供もできるとされています。

(3)一定の条件を満たす飲食店について

  改正作業の中で、規模が小さい飲食店についても喫煙専用室を設けなければならないとなると、改装費用を捻出する余裕がないとか、物理的に喫煙専用室を設ける場所がない等の多くの反対意見がありました。
 そのため、改正健康増進法では、一定の条件を満たす飲食店(全体の55%に相当すると言われています)について経過措置を設けています。具体的には、①2020年4月1日時点で営業していること、②個人経営又は資本金5000万円以下であること、③客席面積が100平方メートル以下であることといった3つの要件を満たす飲食店については、店内禁煙か喫煙を選択することができるとされています。なお、喫煙を選択した店舗は「喫煙可能店」とか「喫煙可能室」といった標識を設置することが必要になります。
 また、飲食店に関しては、例えば、テラス席がある場合は屋外と考えてよいかといった問題がありますが、厚生労働省のガイドラインには、外気の流入が妨げられる場所として、屋根があり、かつ壁側が概ね半分以上覆われている場合には「屋内」となり、そうでない場合には「屋外」となるといった考え方が示されています。それ以外にも対策を進めていく際には様々な疑問点もでてくると思いますが、厚生労働省がWEBページ上で公開しているQ&Aやガイドラインで確認したり、確認できない点については弁護士等の専門家に確認したりしながら実情に即した対策を進めていくようにしてください。

(4)その他

 喫煙可能場所のある施設の事業者は、従業員の受動喫煙を防止するために、①20歳未満の者を喫煙可能場所に立ち入らせないようにしたり、②関係者の受動喫煙を防止するための措置(勤務シフト・勤務フロア・動線の工夫・業務用車両内での喫煙時の配慮等)を講じたりをしなければなりません。

3.法の規制する義務に違反した場合

 これらの法規制の義務に違反した場合には、義務違反の内容に応じて勧告・命令等が行われ、改善が見られない場合には、50万円以下の罰則(過料)が課せられる場合があります。

弁護士 奥山 倫行