1.はじめに
最近、YouTubeでMCバトルをよく見ています。個人的には、俳句や短歌に勝るとも劣らない言葉の芸術だと思います。また、近年は、地上波で放送される機会も増えており、徐々に市民権を得てきています。
そこで、今回は、MCバトルの魅力を語りたいと思います。
2.MCバトルとは?
MCバトルは、ラッパーがDJの流すビートに乗って、決められた小節(バース)に合わせて即興でRapをする戦いです。ライム(韻)、フロウ(音程、強弱、速度の変化)、パンチライン(インパクトのあるフレーズ)等の要素を総合的に考慮して、勝敗が決められます。
ラッパーによって、ライムを踏みまくるスタイル、フロウを奏でるスタイル、対話をしながらパンチラインを生み出すスタイル、これらを組み合わせるスタイル等、得意なスタイルがそれぞれあります。
個人的には、ライムを踏むスタイルが好きなので、近年の名バトルの一つである、戦國MCBATTLE第24章の1回戦、晋平太 vs Authorityの勝者、晋平太選手のラップを引用しながら、魅力を語りたいと思います(ライムを踏んでいる部分は、母音を併記しています)。
まずは、実際のMCバトルを視聴したうえで、以下の本文へ進んでください。
晋平太 vs Authority 字幕ver /戦極MCBATTLE第24章 日本武道館公演
3.1バース目
Freestyle日本代表(aiou) 最高(aiou)だぜ会場(aiou)
誰よりも見せる愛情(aiou) 認めるお前の才能(aiou)
だけどI(ai) don’t know最初(ai)と最後(ai)の違い(ai) 俺は街(ai)を歌い(ai)地元Rep(eu)
俺のこのスキル全てをCheck(eu) しとけ(ioe)晋平太を見とけ(ioe)
開始早々、4小説目までは(aiou)で韻を踏み続けます。そして、5小節目以降は、(aiou)の一部の(ai)でさらに韻を踏み続けます。
また、6小節目の「街を歌い地元Rep」というフレーズは、バトルビートのZORN / Rep feat. MACCHOからのサンプリング(引用)です。バトルビートへのリスペクトですね。バトルビートも半端なく格好いいです。
ZORN / Rep feat. MACCHO
4.2バース目
東村山に夕日が沈む(iuu) 志村のイズム(iuu)
背負ってる(eu)みんな知ってる(eu) 目指してるぜ(eu)ZEEBRA兼(iuaen)志村けん(iuaen)アイーン(ai)
みんなに見せる愛(ai)この気合(ai)の違い(ai)Style(ai)
愛(ai)も気合(ai)も全然足んない(ai)何で分かんない(ai) お前に必要なのはハートとOne Mic(ai)
1小節目の「東村山に夕日が沈む」というフレーズは、晋平太選手の「大丈夫だぁ」という歌からのサンプリングです。晋平太選手は、東村山市在住で、同市出身の著名人志村けんさんを歌った曲です。地元を歌うバトルビートに合わせて、自身の地元を歌う楽曲をサンプリングしています。
4小節目の「アイーン」の後は、これに合わせて(ai)でひたすら韻を踏み続けます。ちなみに、1バース目も(ai)で踏み続けています。もし、1バース目が「アイーン」でライムを踏むための伏線だとしたら、恐ろしいですね。
晋平太-大丈夫だぁ【Official Music Video】
5.3バース目
何度目だ(oea)知ったこっちゃねえ チャンピオンベルト何本目(oea)だ知ったこっちゃねえ
ちゃんとその目が(oea)決めてくれ どっちがオメガ(oea)どっちが似合う天皇陛下(oea)
俺のRhymeは電光石火(oea) Microphone Checker(oea)俺に言わせりゃ下手(ea)
全ては結果(ea)Hi Hater(ea) 帰って来たぜ晋平太(ea)
Authority選手の「アンドロメダ」(oea)という言葉を拾って、ライムを踏み続けます。相手のライムを拾いながら、ライムを重ねて対話していくところが、まさに即興、フリースタイルですね。
6.4バース目
既に大惨事 第四次が来ないように恩返し(aei) HIPHOPって何 問い返し(aei)
総理大臣(ai)に繰り返し(aei)問いたいし(ai) HIPHOP守れば最高(ai)の世界(ai)になるし
そのための橋(ai)渡し 日本武道館(iouoan) 俺は後ろには一歩も動かん(iouoan)
今日は決める 晋平太が勝つ予感(uoan)
4バース目は、会場である「日本武道館」にかけて「俺は後ろには一歩も動かん」というパンチラインを生み出しています。審査員も名ラッパーが揃っているのですが、晋平太選手の狂ったライムを聴いて、思わず笑ってしまっています。
7.最後に
いかがでしたでしょうか。一回聞いただけでは全てのライムに気が付くことができなくても、二回目、三回目と聴き込むことで、ライムに気が付くこともあり、新たな発見があります。
ちなみに、Authority選手は、約一年後に同じ日本武道館で開催されたBATTLE SUMMITで見事優勝しており、不思議なドラマを感じざるを得ません。
これ以外にも、多くの名バトルがありますし、YouTubeでは公式アカウントが名バトルを公開していますので、興味が湧いたら、ぜひ探してみてください。
弁護士 田上 淳一
