1.はじめに
これまでのコラムでは、「【宇宙法1】宇宙法とは何か?」、「【宇宙法2】宇宙基本法」、「【宇宙法3】宇宙活動法」、「【宇宙法4】衛生リモセン法」の基本的な法制度を紹介させていただきました。
今回は、法律とは少し離れて、宇宙法と関係してくる宇宙ビジネスの一部についてご紹介したいと考えております。
2.近い将来には宇宙旅行も…
宇宙ビジネスといっても、今や数えきれないほどのビジネスがあり、将来はこれまで全く想定していなかったビジネスモデルも出てくるかもしれません。
最近では、日本の衣料品通販大手である現株式会社ZOZO(ゾゾ)の創業者である前澤友作さんが2021年12月に、ロシアの宇宙船で国際宇宙ステーション(ISS)に12日間滞在したことは国内でも大きなニュースとなっていました。「宇宙旅行」というのも、宇宙ビジネスの一部とされています。
宇宙空間の旅行というと、地球の軌道周回旅行や、月・火星等の地球以外の衛星や惑星への旅行を想像される方が多いかと思いますが、まずは、現在国内でも商用化が議論されている『サブオービタル旅行』について説明したいと思います。
3.サブオービタル旅行とは?
サブオービタル旅行とは、地表から機体を水平又は垂直に打ち上げて弾道軌道を描き、その頂点(高度約100km)付近にて数分程度の宇宙体験を行う旅行をいいます。
つまり、サブオービタル旅行は、概ね高度100kmに滞在し、無重力体験や宇宙から地球を見るという体験をした後、1~2時間かけて地球へと帰還するというものですので、「日帰りで宇宙へ行くことができる」、「無重力体験を気軽に体験できる」等の特徴が挙げられます。
ただ、サブオービタル旅行には、通常の旅行と違って一定の準備が必要です。メディカルチェック、座学、訓練などです。宇宙旅行として宇宙へ行くためには、旅行者自身の身体にどのような負荷が掛かるのかを疑似環境で体験・身体学習することや、自分の身体を知り、負荷環境下での身体変化を知ることが重要とされています。
なお、国土交通省航空局は、内閣府宇宙開発戦略推進事務局と合同で「サブオービタル飛行に関する官民協議会」を設立し、官民の関係者の協力体制を構築し、実証実験も含めたサブオービタル機の往還飛行について、安全性を確保するとともに、民間事業者の計画的な技術開発に資するよう必要な環境整備について検討を進めています。
*サブオービタル飛行に関する官民協議会は、令和5年12月に第5回目が開催されました。興味のある方は、内閣府のホームページをご参照ください。 https://www8.cao.go.jp/space/policy/suborbi/kaisaiannai/2023.html
4.サブオービタル旅行の法的な課題
サブオービタル旅行は、従来の規制が通用する宇宙ロケットと航空機の中間的な飛行形態といえますので、その飛行についての法的性質を含め、議論すべき点が多く存在するとされています。
たとえば、日本では、宇宙活動法を含め、サブオービタル飛行のための打上げについて特別の規制がされていません。宇宙活動法が規制している「人工衛星等」には、地球周回衛星や探査機などが含まれますが、サブオービタル飛行のための機体は想定されていないのです。そのため、日本では、このような機体が航空法の適用対象となるかを検討したり、宇宙活動法の適用範囲の拡大を検討する必要があります。
また、日本でサブオービタル旅行ビジネスをするうえでは、旅行業法や消費者契約法の適用があるかも検討する必要があります。宇宙飛行には危険も伴いますので、宇宙飛行参加者には宇宙飛行前にはそのような危険への説明と同意を求めることが必須となります。しかし、消費者契約法が適用される個人が宇宙飛行参加者となった場合、事業者の責任をすべて免除するような同意は、消費者契約法8条により無効となるおそれがあります。
このように宇宙旅行には飛行機体の技術・技術だけではなく、法的な側面からの課題もクリアする必要があります。
5.北海道での宇宙ビジネス~STARTUP HOKKAIDO~
令和6年4月2日、北海道での宇宙ビジネスを支援するキックオフイベント(STARTUP HOKKAIDO SPACE ACCELERATOR PROGRAM)に参加してきました。詳細は、一般社団法人SPACETIDEのプレスリリースをご参照ください。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000021.000057321.html
今回の記事では紹介しきれませんが、上記イベントでは、衛星データを活用した高品質のワイン作りやオーロラ鑑賞旅行など、非常に興味深い宇宙ビジネスの開発・成長への期待を感じることができました。今後の動向にも注力していきたいです。
弁護士 日西 健仁
