1. 公布日・施行日
公布日:2022年6月5日
施行日:2024年10月1日
- ※改正前の健康保険法・厚生年金保険法を旧健康保険法・旧厚生年金保険法といい、改正後の健康保険法・厚生年金保険法を新健康保険法・新厚生年金保険法といいます。
2. 知っておくべきポイント
社会保険の適用範囲が、常時使用される従業員が51人以上の事業者に拡大されること
3. 前提
(1)社会保険
社会保険とは、健康保険、厚生年金保険、介護保険、労働者災害補償保険(労災保険)、雇用保険を総称したものを一般的に指します。
このうち、健康保険、厚生年金保険、介護保険を狭義の社会保険と呼び、労災保険、雇用保険を労働保険と呼ぶことが一般的です。以下では、健康保険、厚生年金保険及び介護保険を単に「社会保険」と表記します。
(2)社会保険の種類
| 種類 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 健康保険 | 労働者又はその被扶養者の業務外の疾病、負傷もしくは死亡又は出産に関して保険給付を行い、もって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする保険制度 | 新健康保険法1条 |
| 厚生年金保険 | 労働者の老齢、障害又は死亡について保険給付を行い、労働者及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする保険制度 | 新厚生年金保険法1条 |
| 介護保険 | 加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となった場合において、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、保険給付を行い、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする制度 | 介護保険法1条 |
(3)社会保険の適用要件
① 介護保険の被保険者となる要件
以下のいずれかに該当する者が介護保険の被保険者とされています(介護保険法9条)。
| 要件 | |
|---|---|
| 1 | 市町村の区域内に住所を有する65歳以上の者 |
| 2 | 市町村の区域内に住所を有する40歳以上65歳未満の医療保険加入者 ※医療保険加入者は健康保険の被保険者のみならず、国民健康保険の被保険者を含みます(介護保険法7条8項)。 |
② 健康保険と厚生年金保険の被保険者となる要件
以下のいずれかに該当する事業所で、フルタイムの従業員が健康保険と厚生年金保険の被保険者とされてます(健康保険につき新健康保険法3条3項、厚生年金保険につき新厚生年金保険法6条1項)。
| 要件 | |
|---|---|
| 1 | 事業者が法人の場合 |
| 2 | 事業者が個人事業主で、下記のいずれかに該当する事業の事業所又は事務所であって、常時5人以上の従業員を使用している場合 製造業・土木建築業・鉱業・電気ガス事業・運送業・貨車積卸業・清掃業・物品販売業・金融保険業・保管賃貸業・媒介周旋業・集金案内広告業・教育研究調査業・医療保健業・通信報道業・社会福祉事業・更生保護事業・弁護士、公認会計士等の士業 |
他方で、アルバイト、パートタイマー等の短時間労働者が、以下の要件に該当する場合は、社会保険の対象にはなりません(健康保険につき新健康保険法附則(平成24年8月22日法律第62号)46条1項、厚生年金保険につき、新厚生年金保険法附則(平成24年8月22日法律第62号)17条1項)。
| 要件 | |
|---|---|
| 1 | 1週間の所定労働時間が同一の事業所に使用される通常の労働者の1週間の所定労働時間の4分の3未満 |
| 2 | 1カ月間の所定労働日数が同一の事業所に使用される通常の労働者の1カ月の所定労働日数の4分の3未満 |
もっとも、上記に該当する短時間労働者(以下「特定4分の3未満短時間労働者」といいます)であっても、以下の要件の全てを満たす場合には、社会保険の適用対象となります(健康保険につき旧健康保険法附則(平生24年8月22日法律第62号)46条12項、厚生年金保険につき、旧厚生年金保険法附則(平成24年8月22日法律第62号)17条12項)。
| 要件 | |
|---|---|
| 1 | 使用される従業員が常時100人を超えること |
| 2 | 週の所定労働時間が20時間以上であること |
| 3 | 所定内賃金が月額8.8万円以上であること |
| 4 | 2カ月を超える雇用の見込みがあること |
| 5 | 学生ではないこと |
4.改正による適用対象の拡大
特定4分の3未満短時間労働者の要件のうち「使用される従業員が常時100人を超えること」が「使用される従業員が常時50人を超えること」に変更されます。そのため、使用される従業員が常時51人以上の場合にも社会保険の適用対象となります(健康保険につき新健康保険法附則(平生24年8月22日法律第62号)46条12項、厚生年金保険につき、新厚生年金保険法附則(平成24年8月22日法律第62号)17条12項)。
5.まとめ
社会保険の適用対象拡大に伴い、新たな加入対象者の把握・加入手続きや配偶者の扶養の範囲内で働くことを希望する方への説明が必要となる場合があります。そのため、新たな加入対象者を把握するにあたり、疑問点や不明点がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
弁護士 森谷 拓朗
