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【雇用保険法】雇用保険加入が想定される対象労働者の数やそれに応じた保険料負担の増加等を事前に調査・把握していますか?

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1. 公布日・施行日

 公布日:2024年5月17日

 施行日:2024年10月1日(教育訓練給付金の給付率引上げ)
     2025年4月1日(失業給付の給付制限期間の短縮)
     2025年10月1日(教育訓練休暇給付金の創設)
     2028年10月1日(雇用保険の適用範囲の拡大)

  • ※施行日前の雇用保険法を現行法といい、施行日後の雇用保険法を改正法といいます。

2. 知っておくべき主な改正ポイント

 ① 雇用保険の適用範囲の拡大

 ② 教育訓練やリ・スキリング支援の充実

 ③ 育児休業給付に係る安定的な財政運営の確保等の措置


3. 改正の概要

(1)雇用保険の適用範囲の拡大(改正法6条)

 現行法では、雇用保険法の適用対象となる労働者の条件の一つとして、1週間の所定労働時間が「20時間以上」であることが求められますが(雇用保険法4条1項・6条1号・2号)、改正法により、1週間の所定労働時間が「10時間以上」の労働者まで適用対象が拡大されました。

 これにより、週の所定労働時間が10時間以上の労働者で新たに雇用保険法の適用対象となる労働者は、現行の被保険者と同様に、各種給付(基本手当、教育訓練給付、育児休業給付等)を受け取ることができるようになります。

(2)教育訓練やリ・スキリング支援の充実(改正法10条5項)

 ア 失業給付の給付制限期間の短縮

 現行法では、自己都合により退職した者が失業給付(基本手当)を受給する場合、待期期間である7日間(現行法21条)満了の翌日から2か月間(5年以内に2回を超える場合は3か月)の給付制限期間が設けられており、ハローワークの受講指示を受けて公共職業訓練等を受講した場合には、当該給付制限が解除されます(現行法33条1項)。

 改正法では、給付制限を解除する事由として、現行のものに加えて、離職日前1年以内、または、離職日後に、自ら雇用の安定および就職の促進に資する教育訓練を行った場合が追加されました。

 また、本改正に伴い、通達により、上記給付制限期間が「2か月間」から「1か月間」に短縮されました。

 イ 教育訓練給付金の給付率の引上げ

 現行法では、教育訓練給付金の額は、一定の教育訓練の受講のために支払った費用の額の20%以上70%以下の範囲内で定めるとされていますが(現行法60条の2第4項)、改正法では教育訓練給付金の給付率の上限が「70%」から「80%」に引き上げられることとなりました。具体的には以下のとおりです。

 専門実践教育訓練とは、中長期的なキャリア形成に資する専門的かつ実践的な教育訓練講座をいいます。

 特定一般教育訓練とは、速やかな再就職および早期のキャリア形成に資する教育訓練講座をいいます。

 ウ 教育訓練休暇給付金の創設

 現行法では、労働者が、教育訓練に専念するために、自発的に休職などして仕事から離れる場合、その訓練期間中の生活費を支援する制度はなかったですが、改正法では、労働者の主体的な能力開発(リ・スキリング)の観点から、下記の要件を充足する被保険者が教育訓練を受けるための休暇を取得した場合に、基本手当(失業保険)に相当する額の給付として、賃金の一定割合を支給する教育訓練休暇給付金が支給されることとなりました。


4.まとめ

 今回の改正により、雇用保険被保険者の拡大に伴い、企業としては、加入手続や労働条件通知書兼雇用契約書の雇用保険欄の記載の見直し、離職票の発行などの事務手続が相当程度増加することが予想されるため、加入が想定される対象労働者の数やそれに応じた保険料負担の増加等を事前に調査・把握するとともに、社内整備を進めて準備しておく必要があります。疑問点や不明点がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

 弁護士 森谷 拓朗