1.はじめに
近年、障害者雇用の取組みが広がっています。一定規模以上の企業では、障害者を雇用する義務があります。今回は障害者雇用について取り上げたいと思います。
2.障害者雇用促進法
障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)は、障害者全般が社会の一員として自立するため、事業主に障害者の雇用義務を課する等の施策を実施し、職業の安定を図り障害者の実質的平等の達成を目指すものです。
この法律は、障害者の雇用義務等に基づく雇用の促進等のための措置、雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会及び待遇の確保並びに障害者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするための措置、職業リハビリテーションの措置その他障害者がその能力に適合する職業に就くこと等を通じてその職業生活において自立することを促進するための措置を総合的に講じ、もって障害者の職業の安定を図ることを目的とする(障害者雇用促進法1条 目的)。
3.障害者の雇用義務
事業主とは、その雇用する対象障害者である労働者の数が、その常時雇用する労働者の数に次の区分による障害者雇用率を乗じて得た数(法定雇用障害者数)以上であるようにしなければならない(法38条、43条)。
(1)令和8年6月30日までの経過措置
一般事業主 100分の2.5
特殊法人 100分の2.8
国及び地方公共団体 100分の2.8
都道府県教育委員会等 100分の2.7
(2)本則上の障害者雇用率(令和8年7月1日~)
一般事業主 100分の2.7
特殊法人 100分の3
国及び地方公共団体 100分の3
都道府県教育委員会等 100分の2.9
例)一般事業主の場合の100分の2.5以上とは、労働者40人につき1人以上ということになります。労働者を40人以上雇用する事業主に対象障害者の雇用義務が発生することになります。
4.障害者雇用状況の報告
一般事業主が常時40人以上使用している場合、毎年1回、6月1日における対象障害者の雇用状況を翌月15日までに、その主たる事務所の所在地を管 轄する公共職業安定所長に報告しなければならない(法43条7項)。
5.障害者雇用率の特例
障害者雇用率は、原則として当該企業において達成する必要がありますが、一定の場合には子会社や企業グループにおいても算定できる特例があります。
(1)特例子会社制度
事業主が障害者の雇用に特別の配慮をした子会社を設立し、一定の要件を満たす場合には、特例としてその子会社に雇用されている労働者を親会社に雇用されているものとみなして、実雇用率を算定できることにしています。また、特例子会社を持つ親会社については、関係する子会社も含め、企業グループによる実雇用率算定を可能としています。

(2)企業グループ算定特例制度
企業グループ算定特例は、一定の要件を満たす企業グループとして厚生労働大臣の認定を受けたものについては、特例子会社がない場合であっても、企業グループ全体で実雇用率の通算が可能となるものです。

(3)事業協同組合等算定特例制度
事業協同組合等算定特例は、中小企業が事業協同組合等を活用して協同事業を行い、一定の要件を満たすものとして、厚生労働大臣の認定を受けたものについて、事業協同組合等(特定組合等)とその組合員である中小企業(特定事業主)で実雇用率の通算が可能となるものです。

6.まとめ
近年、障害者雇用への関心が高まっている状況にあります。各企業では障害者雇用に向けての取り組みが進められていることと思います。障害者雇用にあたってアドバイスが必要な場合には、弁護士、社会保険労務士等にご相談ください。
弁護士・社会保険労務士 澤井 利之
