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【建築基準法・建築物省エネ法】省エネ対策の推進に向けて規制が変わっています!

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1. 公布日・施行日

 公布日:2022年6月17日
施行日:2025年4月1日

 ※建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律を建築物省エネ法といいます。
 ※施行日前の建築基準法を現行法といい、施行日後の建築基準法を改正法といいます。
 ※施行日前の建築物省エネ法を現行省エネ法といい、施行日後の建築物省エネ法を改正省エネ法といいます。

2. 知っておくべき主な改正ポイント

① 小規模建築物の建築確認審査の一部の省略範囲の縮小
② 構造規制の合理化
③ 省エネ基準への適合義務化

3. 改正の概要

(1)小規模建築物の建築確認審査の一部の省略範囲の縮小(改正法第6条第1項第1号、第2号)

 ア 4号特例

 小規模建築物について建築確認審査の一部を省略できる特例を「4号特例」といいます。現行法では、4号特例の対象とされる建築物は以下のとおり定められていました(現行法第6条第1項第4号)。

木造建築物非木造建築物
以下の条件を全て満たすもの
①2階建て以下
② 延べ面積500平方メートル以下
③ 高さ13メートル以下または軒高9メートル以下
以下の条件を全て満たすもの
① 平屋
② 延べ面積200平方メートル以下

 4号特例により、以下の建築確認審査が不要となります。

 ① 建築設備の構造強度
② 居室の採光
 ③ 換気設備の技術基準
 ④ 地階における住宅等の居室
 ⑤ 電気設備
 ⑥ 廊下

 など

 イ 法改正による影響

 法改正により、「4号建築物」の区分が廃止され、以下のとおり、「新2号建築物」と「新3号建築物」に再分類されます。

新2号建築物新3号建築物
以下の条件のいずれかを満たすもの
① 木造2階建て
② 延べ面積200平方メートル超
以下の条件を全て満たすもの
① 平屋
② 延べ面積200平方メートル以下
(木造・非木造問わず)

 新2号建築物は、全ての項目が建築確認審査の対象となり、従来よりも建築確認申請時の審査項目が増加します。
 新3号建築物は、従来の4号建築物と同様に、建築確認時の審査項目が一部免除されます。

(2)構造規制の合理化(改正法第6条の3第1項)

 ア 木造建築物の仕様の実況に応じた壁量基準等の見直し

 現行法では、屋根の重さの区分に応じて、必要な建築物の壁量及び柱の小径を算定していたところ、改正法では、重さではなく木造建築物の仕様の実況に応じて、必要な建築物の壁量及び柱の小径を算定できるように見直しが行われました。

 なぜなら、省エネ性能のニーズに対応するため、断熱性能の向上や太陽光発電設備等の設置が行われる場合、従来に比べて重量が大きいため、地震動等に対する影響にいっそう配慮が必要となるからです。

 イ 階高の高い木造建築物等の増加を踏まえた構造安全性の検証法の合理化

 近年では、建築物の断熱性向上等のために、階高を高くした建築物のニーズが高まっています。そこで、改正法及び改正省エネ法は、以下のとおり、構造安全性の確認方法を変更しました。

現行法改正法
以下の場合、高度な構造計算によって構造安全性を確認する必要があり、一級建築士でなければ設計・工事監理ができない。

高さ13メートルまたは軒高9メートルを超える木造建築物を建築する場合
以下の場合、高度な構造計算によって構造安全性を確認する必要がなく、二級建築士でも設計・工事監理ができる。

3階建て以下かつ高さ16メートル以下の建築物を建築する場合

(3)省エネ基準への適合義務化(改正省エネ法第10条)

 ア 省エネ基準

 省エネ基準に適合しているかは、①「外皮性能基準」と、②「一次エネルギー消費量基準」によって判断されます。住宅の場合は①②の両方、非住宅の場合は②一次エネルギー消費量基準に適合させなければなりません。

 ① 外皮性能基準は、外皮(外壁や窓など)の表面積当たりの熱の損失量が、基準値以下となることを求めるものです。

 ② 一次エネルギー消費量基準は、空気調和設備、換気設備、照明設備、給湯設備などの設備機器等における一次エネルギー(石油、水力、太陽熱など加工されない状態で供給されるエネルギー)の消費量が、基準値以下となることを求めるものです。

 イ 法改正による影響

 現行省エネ法は、非住宅かつ300平方メートル以上の中規模・大規模建築物にのみ、省エネ基準への適合が義務付けられていました。
 しかし、改正省エネ法では、原則として全ての住宅・建築物について、省エネ基準への適合が義務付けられます。また、増改築を行う場合にも、省エネ基準への適合が義務付けられます。


4.まとめ

 今回の改正により、建築確認・検査が必要な対象範囲の整理や壁量基準の見直し、構造安全性の確認方法、省エネ基準への適合義務化などがあり、事業者は、規制に対応した業務内容になっているかを再度確認する必要があります。また、これまで確認が不要であったものが必要となったりと、建築までのスケジュールも変動することから、スケジュールの確認も必要となりますので、業務内容や体制を改めてご確認ください。

 弁護士 森谷 拓朗