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【情報流通プラットフォーム対処法】プロバイダ責任制限法から情報流通プラットフォーム対処法へと改正されます!

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1. 公布日・施行日

 公布日:2024年5月17日
 施行日:公布日から1年以内の政令で定める日

 ※「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(=プロバイダ責任制限法)を現行法といいます
 ※「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」(=情報流通プラットフォーム対処法)を改正法といいます。

2. 知っておくべき主な改正ポイント

 大規模特定電気通信役務提供者の義務が新たに追加

3. 改正の概要

(1)大規模特定電気通信役務提供者とは(改正法第2条第14号・第21条第1項)

 「大規模特定電気通信役務提供者」とは、大規模特定電気通信役務を提供する者として、総務大臣に指定された事業者をいいます。

 「大規模特定電気通信役務」とは、一定規模以上の特定電気通信役務であって、侵害情報送信防止措置の実施手続きの迅速化および送信防止措置の実施状況の透明化を図る必要性が特に高いと認められるものをいいます。     

 「特定電気通信役務」とは、不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信(=特定電気通信)の用に供される電気通信設備(=特定電気通信設備)を用いて提供する電気通信役務をいいます(改正法第2条第1号、第2号、第3号)。

(2)大規模特定電気通信役務提供者として指定される事業者の規模に関する基準(改正法第21条第1項)

 大規模特定電気通信役務提供者として指定される事業者の規模に関する基準について、改正法は「平均月間発信者数」または「平均月間延べ発信者数」によって判定すると規定しています(同項1号)。しかし、「平均月間発信者数」及び「平均月間延べ発信者数」の具体的な数値は、今後総務省令によって定められる予定のため、現時点では不明です。

 また、上記の、「平均月間発信者数」及び「平均月間延べ発信者数」の要件を満たす事業者でも、侵害情報の送信防止措置を講ずることが技術的に可能であり、かつ権利侵害発生のおそれが類型的に少ないサービスに該当しないことも大規模特定電気通信役務提供者として指定される事業者の要件です(同項2号・3号)。

要件内容改正法
「平均月間発信者数」又は「平均月間延べ発信者数」を超えないこと第21条第1項第1号
侵害情報の送信防止措置を講ずることが技術的に可能であること第21条第1項第2号
特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害が発生するおそれの少ない特定電気通信役務として総務省令で定めるもの以外のものであること第21条第1項第3号

(3)大規模特定電気通信役務提供者の義務(改正法第22条ないし)

 大規模特定電気通信役務提供者の義務の内容は以下のとおりです。

① 総務大臣に対する届出
② 被侵害者からの申出を受け付ける方法の公表
③ 侵害情報に係る調査の実施
④ 侵害情報調査専門員の選任・届出
⑤ 送信防止措置の申出者に対する通知
⑥ 送信防止措置の実施に関する基準等の公表
⑦ 送信防止措置を講じた場合の発信者に対する通知等
⑧ 送信防止措置の実施状況等の公表

ア 総務大臣に対する届出(改正法第22条第1項)

 大規模特定電気通信役務提供者は、総務大臣による指定を受けた日から3か月以内に、所定の事項を総務大臣に届け出なければなりません。なお、届け出るべき事項は、今後総務省令によって定められる予定です。

イ 被侵害者からの申出を受け付ける方法の公表(改正法第23条)

 大規模特定電気通信役務提供者は、提供する大規模特定電気通信役務を利用して行われる特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者が侵害情報等を示して当該大規模特定電気通信役務提供者に対し侵害情報送信防止措置を講ずるよう申出を行うための方法を定め、これを公表しなければなりません。

ウ 侵害情報に係る調査の実施(改正法第24条)

 大規模特定電気通信役務提供者は、権利を侵害されたとする者から侵害情報送信防止措置を講ずるよう申出があったときは、権利が不当に侵害されているか否かについて、遅滞なく必要な調査を行わなければなりません。

エ 侵害情報調査専門員の選任・届出(改正法第25条)

 大規模特定電気通信役務提供者は、侵害情報送信防止措置の申出を受けて行う調査のうち、専門的な知識経験を必要とするものを適正に行わせるため、侵害情報調査専門員を選任する必要があり、同専門員は、SNSや匿名掲示板などを通じて発生する誹謗中傷などの権利侵害への対処に関して、十分な知識経験を有する者である必要があります。そして、同専門員を選任したときは、遅滞なく総務大臣に届け出なければならないです。

 なお、今後、選任すべき侵害情報調査専門員の最低人数が総務省令によって定められる予定です。

オ 送信防止措置の申出者に対する通知(改正法第26条)

 大規模特定電気通信役務提供者は、侵害情報送信防止措置の申出を受けて行った調査の結果に基づき、当該措置を講ずるかどうかを判断し、原則として申出を受けた日から14日以内の総務省令で定める期間内に、所定の事項を申出者に通知しなければなりません。

カ 送信防止措置の実施に関する基準等の公表(改正法第27条)

 大規模特定電気通信役務提供者が情報の送信防止措置を講ずることができるのは、原則として事前に公表している削除基準などに従う場合に限られ、当該基準は、どのような情報が送信防止措置の対象になるかを具体的に定めるなど、一定の基準に適合させるよう努めなければなりません。

キ 送信防止措置を講じた場合の発信者に対する通知等(改正法第28条)

 大規模特定電気通信役務提供者が運営するプラットフォーム上において送信防止措置を講じたときは、原則として遅滞なく、その旨およびその理由を当該情報の発信者に通知し、または発信者が容易に知り得る状態に置く措置を講じなければなりません。

 また、削除基準などに基づいて送信防止措置を講じた場合には、当該基準におけるどの規定に基づいて送信防止措置を講じたのかを明らかにしなければなりません。

ク 送信防止措置の実施状況(改正法第29条)

 大規模特定電気通信役務提供者は、自ら運営するプラットフォームに関して、毎年1回以下の事項を公表しなければなりません。

侵害情報送信防止措置の申出の受付の状況
侵害情報送信防止措置を講ずるかどうかに関する、申出者への通知の実施状況
送信防止措置を講じた場合における、発信者に対する通知等の措置の実施状況
そのほか、総務省令で定める事項


4.まとめ

 今回の改正により「大規模特定電気通信役務提供者」に該当する場合、新たに義務が課されます。現在、総務省令で明らかになっていない基準があるため、今後の動向についてご注意ください。「大規模特定電気通信役務提供者」に該当するか否か気になる方がいましたら、是非ご連絡いただきたく存じます。

弁護士 森谷 拓朗