1. 公布日・施行日
公布日:2024年11月26日
施行日:2025年4月1日
※北海道カスタマーハラスメント防止条例を北海道条例といいます。
※カスタマーハラスメントをカスハラといいます。

2. 知っておくべき主なポイント
① カスハラの定義
② 事業者等の責務
③ 違反した場合の効果
3. 概要
(1)カスハラの定義(北海道条例第2条第5項)
北海道条例による禁止の対象となるカスハラとは「従業者等に対する顧客等からの要求、言動等のうち、その態様や程度が社会通念上不相当なものであって、当該要求、言動等により、従業者等の就業環境が害される行為」を指します。
カスハラに該当する具体的な事例は、北海道のHPで公表されている「北海道カスタマーハラスメント防止条例に係る指針」において示されており、①叩くそぶりや声を荒げるなどの高圧的な言動、②従業員に対して必要以上に長時間にわたって対応を求め続ける行為、③従業員の顔や名札の撮影やSNSへの公開などが挙げられています。
(2)事業者等の責務(北海道条例第6条第1項及び同条第2項)
北海道条例は、事業者の責務について「道が実施するカスタマーハラスメント対策に協力するとともに、カスタマーハラスメント防止に係る取組を主体的に行う」と定めています。また、事業者団体(事業協同組合や商工会など事業者として共通の利益を増進することを目的とする事業者の結合体又は連合体のこと)の責務についても「道が実施するカスタマーハラスメント対策に協力するよう努めるとともに、その構成員である事業者が行うカスタマーハラスメント防止に係る取組について、必要な助言、協力その他の援助を行う」と定めています。
具体的な例として、顧客からのカスハラによって従業員の安全が脅かされる事態が発生した際に、現場責任者等を含む複数人で対応し、顧客から従業員を引き離す、あるいは管轄の警察や弁護士と連携を取りながら対応するなど、被害の拡大・継続を組織として防止することなどが責務として求められます。
定められた責務を事業者が果たすに当たっては、前述の「北海道カスタマーハラスメント防止条例に係る指針」の内容を確認した上で、北海道からの情報提供や北海道が整備する相談支援体制を利用することも検討してください。
(3)違反した場合の効果
北海道条例自体には罰則規定が定められていません。しかし、カスハラの行為態様次第では、傷害罪、強要罪、名誉毀損罪等の犯罪に該当する可能性があり、刑法等に基づき処罰される可能性があります。
また、北海道条例でカスハラが法令上明確に禁止される行為に位置付けられたことにより、カスハラに該当する行為を理由とする慰謝料請求等の民事訴訟における裁判官の判断にも影響が生じる可能性もあるため、今後の裁判例の傾向の変化に注意が必要です。
4.まとめ
北海道条例は東京都や群馬県と並んで全国ではじめてカスハラを禁止する内容の条例であるため、同種の前例が乏しく、その影響や運用についての不透明な部分が少なくありません。そのため、事業者は、顧客の行動がカスハラに該当するのかや、カスハラに対して法律上どのような対応をし得るのか、カスハラ防止に向けて事業者としてどのような施策を行う必要があるのか等の点について、慎重に検討する必要があります。
北海道条例を踏まえたカスハラに関する問題でお悩みの際には、お気軽にご相談ください。
弁護士 森谷 拓朗
