1. 公布日・施行日
公布日:2024年4月15日
施行日:2025年6月1日
※労働安全衛生法を法といいます。
※労働安全衛生規則を規則といいます。
2. 知っておくべき主なポイント
熱中症の重篤化を防止するために、事業者に対して以下の事項が義務付けられ、違反すると罰則が科されること
① 体制整備
② 手順作成
③ 関係者への周知
3. 概要
(1)熱中症対策が必要な場合
事業者が規則に定める熱中症対策を行う必要があるのは、暑熱な場所において連続して行われる作業等「熱中症を生ずるおそれのある作業」を行うときです。
「熱中症を生ずるおそれのある作業」は、「暑さ指数(WBGT)28度以上または気温31度以上の環境下で、連続1時間以上または1日4時間超の実施が見込まれる作業」であることが通達で示される予定となっています(『労働安全衛生規則の一部を改正する省令案(熱中症関係)に関する意見募集の結果 について』6番)。
この「暑さ指数(WBGT)」とは、熱中症を予防することを目的として提案された指標で、WBGT値が高いと熱中症のリスクが高いと判断されます。「暑さ指数(WBGT)」について、より詳しい内容を知りたい方は以下のURLをご参照ください。
https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt.php(環境省「熱中症予防情報サイト」)
(2)体制整備
事業者は、あらかじめ、熱中症を生じた疑いがある作業従事者を発見した者に、その旨の報告をさせる体制を整備しなければなりません。
考えられる報告体制としては、現場で作業を管理する者、衛生管理者、安全衛生推進者、それ以外の者などの報告を受ける者をあらかじめ定める方法や、定期報告のルールを設ける方法、ウェアラブルデバイスを用いて身体に異常が生じたときに自動的に通知が送信されるようにする方法等が考えられます。
なお、報告体制の具体的内容や実施方法については、追って通達等で示される予定です。
(3)手順作成
事業者は、暑熱な場所において連続して行われる作業等「熱中症を生ずるおそれのある作業」を行うときは、あらかじめ作業場ごとに、以下の措置の内容および実施手順を定めなければなりません。
① 当該作業からの離脱
② 身体の冷却
③ 必要に応じて医師の診察または処置を受けさせること
④ その他熱中症の症状の悪化を防止するために必要な措置
考えられる熱中症対策について「厚生労働省「令和 7 年『STOP!熱中症 クールワークキャンペーン』実施要綱」では、以下のような内容が示されています(https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/001478633.pdf)。
① 適切な身体冷却が有効なため作業場所の近くに冷房を備えた休憩場所又は日陰等の涼しい休憩場所の選定・確保
② 透湿性及び通気性の良い服装の準備
③ 水分及び塩分の作業前後の摂取及び作業中の定期的な摂取を可能とするルールの策定
④ 熱中症の症状、熱中症の予防方法、緊急時の対応などの教育研修の実施
なお、熱中症対策の具体的内容や実施方法についても、追って通達等で示される予定です。
(4)周知
事業者は、当該作業に従事する者に対し、報告をさせる体制並びに熱中症の症状の悪化を防止するために必要な措置の内容及びその実施に関する手順を周知させなければなりません。
考えられる周知の方法としては、社内のイントラネットによる情報共有、マニュアルの配布等が考えられます。
(5)違反した場合の効果
規則で定められた熱中症対策を怠った事業者は、都道府県労働局長または労働基準監督署長から、以下の使用停止命令等を受けるおそれがあります。
① 作業の全部または一部の停止
② 建設物等の全部または一部の使用の停止または変更
③ その他労働災害を防止するため必要な事項
また、熱中症対策の実施義務に違反した者は「6カ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」に処され、法人に対しては「50万円以下の罰金」が科されます。
4.まとめ
事業者は、熱中症対策が義務付けられますが、具体的な対策内容は、追って通達等で示されるため、事業者としてどのような施策を行う必要があるのか等の点について、慎重に検討する必要があります。
既に自社で熱中症対策を行っているものの当該対策が適切か否か悩まれている場合や、未だ熱中症対策を行っておらず自社に適した方法が分からない場合には、ご相談者の事業内容や現場の実状に則した熱中症対策の方法をご提案いたしますので、お気軽にご相談ください。
弁護士 森谷 拓朗
