1.はじめに
「橋本ってマジでサッカー以外の趣味ないよね」
ある日の昼食中に某同僚弁護士が言い放った一言です。もはや悪口です。
子煩悩の私には、4歳の息子と遊ぶという立派な趣味があります。そこで、今回は、息子とのレジャーに際して時間的にも費用的にも大きなウエイトを占めている鉄道の追っかけ活動についてお話したいと思います。
2.九州新幹線「さくら」→「あそぼーい!」→「ソニック」
鉄道が大好きな私の息子は、常日頃図鑑を熟読し、マニアックな鉄道の情報をインプットしています。その中でも、私の地元が福岡ということもあり、博多駅構内の看板などで接する機会が多いJR九州の観光列車には特に興味深々です。JR九州は、D&S(デザイン&ストーリー)列車と銘打ち、ビジュアルやインテリアにこだわった観光列車を多数運行しています。
その中で、息子が最初に乗りたいと言い出したのは「あそぼーい!」でした。JR九州のキャラクター「くろちゃん」が散りばめられたかわいらしい車体に加え、車内には木のおもちゃの遊び場があるという子どもにはたまらない観光列車です。名前の由来は、九州屈指の観光地「阿蘇」と「遊ぼう」の2つの意味が込められています。

↑別府駅にて、「あそぼーい!」下車後の息子。本人への配慮で顔は黒塗りしていますが、ご満悦です。車体に散りばめられた黒い犬が「くろちゃん」です。
現在は、熊本駅と阿蘇市の宮地駅の間の運行になっている「あそぼーい!」ですが、私が行った2024年5月当時は、熊本駅から大分県の別府駅まで運行していたこともあり、福岡を拠点に九州新幹線「さくら」(博多→熊本)→「あそぼーい!」(熊本→別府)→「ソニック」(別府→博多)という旅程の鉄道旅を敢行しました。
途中、別府で一泊し、日本屈指の温泉地の夜を堪能することができ、息子の鉄道欲と私の温泉欲を満たす旅となりました。

↑「あそぼーい!」下車後に向かいのホームで「ソニック」を見つけてウキウキの息子。別府で一泊のため、乗車するのは翌日なのですが、待ち切れない様子で写真撮影をせがまれました。博多・大分間を走るカジュアルな特急列車なので、弁護士登録前の研修地が大分市であった私にとっても乗車機会が多く、馴染みの深い列車です。
3.「トレインパーク白山」と北陸新幹線「かがやき」
2024年3月、石川県の白山市に、北陸新幹線の車両基地である白山総合車両所に隣接した体験型施設として、「トレインパーク白山」がオープンしました。息子はこの情報を幼児向け雑誌からいち早く仕入れ、昨年のクリスマス前にサンタさんからのプレゼントの希望を尋ねた際には「トレインパーク白山!」という強欲なオーダーを口に出すほどの熱視線を送っていました。
そのような中で2025年1月、私の経済力では「トレインパーク白山」の買収には到底手が届きませんでしたが、家族三人分の旅費と入場料ぐらいなら何とかということで、北陸旅行に行ってきました。
現地では、息子の希望により当然のように北陸新幹線「かがやき」にも乗車してきました。

↑次から次に北陸新幹線「かがやき」がやってくる金沢駅のホームから、しばらく動こうとしませんでした。
4.「A列車で行こう」→「指宿のたまて箱」→「かわせみやませみ」
私にとって我が家の鉄道巡り史上もっとも過酷だったのは、2024年12月に敢行した「A列車で行こう」(三角(熊本県宇城市)→熊本)→「指宿のたまて箱(鹿児島中央⇔指宿(鹿児島県指宿市))」→「かわせみやませみ(熊本→阿蘇(熊本県阿蘇市))」のルートです。勘の良い方はお気づきかもしれませんが、各列車の発着地が繋がっていません。
年末年始の長期休みの帰省に合わせて、息子との間で福岡に行ったら何をしたいかという話になった際に「1日目で『A列車に行こう』に乗って、2日目で『かわせみやませみ』に乗って、3日目で『指宿のたまて箱』に乗る!」と言い出した息子に対し、何も考えずに「分かった分かった」という生返事をした私は言質を取られてしてしまいます。窮地に立たされた私は、父親としての責任を果たすべく、必死で旅程を検討しました。今思うと、「分かった分かった」という前に、「指宿」という福岡から遠く離れた有名温泉地の地名に引っかかるべきでした。
結果として、観光列車の限られた発着本数の都合によりで2日目の予定と3日目の予定の入れ替えを余儀なくされたものの、息子の希望する三種類の観光列車すべてに乗車させることができました。敢行した旅程は、1日目は福岡空港に着陸するなりレンタカーを借り、車で三角駅まで移動して妻子を「A列車で行こう」に乗せたうえで私は車で追いかけて熊本駅で下車後の妻子を拾い、鹿児島市に移動して一泊して2日目は鹿児島中央駅・指宿駅間を「指宿のたまて箱」で往復したうえで再度車で熊本市まで移動して一泊し、3日目は熊本駅から妻子を「かわせみやませみ」に乗せたうえで私は車で追いかけて阿蘇駅で妻子を拾い、福岡に戻るというものです。Google mapで調べたところ、私の車での総走行距離は700キロ超で、北海道に置き換えると札幌・知床斜里駅間の往復に匹敵する距離でした。

↑三角駅にて、「A列車で行こう」の前で車両のロゴ(車体前方二か所にプリント)の真似をする息子
過酷なうえに、観光列車乗車中の息子がもっとも笑顔の時間にはほとんど一緒にいられないという私を滅した旅程ではありましたが、熊本での夜には熊本勤務の経験がある父に紹介してもらった郷土料理の店に行き、馬刺しや天草の豊富な海鮮を楽しむことができました。
5.最後に
上記のほかにも、北海道新幹線「はやぶさ」を目当てに函館旅行に行ったり、山形新幹線「つばさ」を目当てに東北旅行に行ったりもしました。
私自身は、もともと鉄道のことは好きでも何でもありませんでした。鉄道好きの息子が生まれるまでは、鉄道のことは単なる移動手段としか捉えていませんでした。
そんな私でしたが、現在は、息子のためとは言えども、旅行のたびに鉄道を中心に旅程を検討するくらいには鉄道に浸かった日々を送っており、「人って子どもの存在で簡単に変わるんだなあ」ということを実感しています。
子育て経験者の方であれば、皆様にも大なり小なり似たような経験があるのではないでしょうか。そのような方は、今回の記事を通して親近感を抱いていただけますと幸いです。
弁護士 橋本 健志
