1. 公布日・施行日
公布日:2024年5月31日
施行日:2025年4月1日
※施行日後の「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」を改正法といいます。
2. 知っておくべき主な改正ポイント
① 介護休暇を取得できる労働者の要件が緩和されました。
② 介護離職を防止するために事業主に課せられる義務が追加されました。
3. 改正の概要
事業主が改正法の内容に違反した場合には、厚生労働省から事実関係の報告を求められることや、違反是正のための助言、指導又は勧告がなされる可能性があります。この報告を行わず又は虚偽の報告を行った場合には20万円以下の過料に処されたり、勧告に従わなかった場合にはその旨を公表される可能性もありますので、以下の改正内容にご注意ください。
(1)介護休暇を取得できる労働者の要件緩和(改正法12条2項)
介護休暇を取得できる労働者の要件が緩和されました。 労使協定により介護休暇を取得できる労働者に制限を設けている場合(介護休暇取得の対象から除外できる労働者を設けている場合のこと)、当該制限は以下の表のとおり緩和されています。
| 改正法施行前 | 改正法施行後 |
|---|---|
| 【除外できる労働者】 ①週の所定労働日数が2日以下 ②継続雇用期間が6ヶ月未満 | 【除外できる労働者】 ①週の所定労働日数が2日以下 ※改正前の②の要件が撤廃されました。 |
上記変更に伴い、労使協定を締結している事業主は就業規則や労使協定の内容を見直す必要があります。
(2)介護離職防止のための雇用環境整備に関する義務の追加(改正法22条2項、同条4項)
職場の雰囲気や人間関係などによっては、介護休業の申請や、介護両立支援制度等(※)の申出を行うのを躊躇う労働者がいることが問題視されています。このような問題を緩和・解消し、労働者が円滑に申し出を行えるようにするため、事業主は以下の①から④のいずれかの措置を講じなければなりません。
(※)介護休暇に関する制度、所定外労働の制限に関する制度、時間外労働の制限に関する制度、深夜業の制限に関する制度、介護のための所定労働時間の短縮等の措置のことを言います。
① 介護休業・介護両立支援制度等に関する社内研修の実施
厚生労働省のサイトに研修の具体的内容をまとめた研修用資料が公開されていますので、この資料も参考にしながら研修を実施してください。
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/model.html「【2】『介護支援プラン』策定マニュアル(企業向け)」【資料編】資料-3)
② 介護休業・介護両立支援制度等に関する相談窓口を設置する等の相談体制の整備
実際に相談を受けた場合に備え、相談者のプライバシー等を侵害しないような対応や、案内すべき行政サービスをまとめるなどの制度設計が必要です。
③ 自社の労働者の介護休業取得・介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供
自社の労働者に対して、介護休業・介護両立支援制度等の利用事例を収集し、当該事例の掲載された書類の配付やイントラネットへの掲載等を行い、労働者の閲覧に供する必要があります。事例の提供にあたっては、特定の性別や職種、雇用形態等に偏ることなく、可能な限り様々な労働者の事例を収集、提供するようにしてください。
④ 自社の労働者へ介護休業・介護両立支援制度等の利用促進に関する方針を周知
厚生労働省のサイトでは、社内周知のための資料として、以下のような参考例が共有されています。

(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/model.html「【2】『介護支援プラン』策定マニュアル(企業向け)」【資料編】資料-5)
(3)介護離職防止のための個別の周知・意向確認の義務化(改正法21条3項)
(ⅰ)介護に直面した旨の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認
事業主は、介護に直面した旨の申出をした労働者に対して、介護休業制度等に関する以下の事項の周知と介護休業の取得・介護両立支援制度等の利用の意向確認を個別に行わなければなりません。具体的には、以下の表をご確認ください。
| 周知事項 | ① 介護休業に関する制度、介護両立支援制度等 ② 介護休業・介護両立支援制度等の申出先 ③ 介護給付金に関すること |
| 個別周知・意向確認の方法 | ① 面談 ② 書面交付 ③ FAX ④ 電子メール 等のいずれか ※①はオンライン面談も可能。③④は労働者が希望した場合のみ。 |
(ⅱ)介護に直面する前の早い段階(40歳等)での情報提供
事業主は、労働者が介護に直面する前の早い段階で、介護休業や介護両立支援制度等の理解と関心を深めるため、事業主は介護休業制度等に関する事項について情報提供しなければなりません。具体的には、以下の表をご確認ください。
| 情報提供期間 | ① 労働者が40歳に達する日の属する年度(1年間) ② 労働者が40歳に達する日の翌日から1年間 ※上記①②のいずれか |
| 情報提供事項 | ① 介護休業に関する制度、介護両立支援制度等 ② 介護休業・介護両立支援制度等の申出先 ③ 介護給付金に関すること |
| 情報提供の方法 | ① 面談 ② 書面交付 ③ FAX ④ 電子メール 等のいずれか ※①はオンライン面談も可能 |
4.まとめ
今回の改正により、全ての事業者を対象に、義務化される事項を含め変更が行われています。そのため、自社における制度や社内規程などの内容を確認・変更することが求められます。変更を行うにあたって疑問点や不明点がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
弁護士 森谷 拓朗
弁護士 澤口 桜子
