職場でも価値観が多様化し、対応に苦慮している場面があると思います。自分と異なる価値観を異様なものとして排除し、扱いにくいものとして扱ってしまうことがあります。例えば、理解できない事象への対応として自分の知識に関連付け、自分の知識の範囲内で解釈する。それが正解でしょうか。
まずは、そのまま受け入れる。共感的理解という考え方があります。自分のモノサシで理解する前に聞き取り、受け入れる。そこにはただ聞く、無評価で聞くという姿勢も含まれます。その際に理解できないことがあっても、そのまま受け入れる。何を言おうとしているのかを受け止める。
人はそれぞれ違うので、面白いのではないでしょうか。コミュニケーション、対話、接触から共通点が生じ、理解が生まれることもありますが、完全ではないことを受け入れる。そうしないと、表現者にはあきらめが生じ、思考が表出せず、場合によっては思考自体が停止してしまうことがあります。思考が停止することで、新しい機会を失うことによって成長が止められるという結果になってしまいます。
専門分野以外への興味関心を持ち、知識の森への広がりに足を踏み入れる。日常生活から離れた知識の多様性を受け入れる。意識、感覚の受容、相手の尊重。理解できないことを受け入れる。無理に自分のモノサシに当てはめないことで自分のモノサシとズレることによるストレスを回避できる。幅広い知識や教養は、学力や学歴ではなく、考えることを受け止めるための素地となります。
会社の経営者や人事労務担当者は、職場で社員との人間関係において様々な摩擦が生じることがあります。人はそれぞれ違うことを受け入れて対応することにより、人間関係にも安定感が生まれる。そうすることによって各人の能力が成長し、会社の発展に寄与するのではないかと考えます。

画一化することによって管理しやすい状況が生まれます。多様化することはコントロールしにくいといった側面もありますが、それを伸ばすことによって多方面で成長発展する可能性があります。こうした多様性を包含できない組織は成長を自ら止める結果になります。同じことなら同じような成長発展しかありません。これまでの繰り返しにすぎないという状況です。
それに対して、違いを生かすことができれば成長発展が生まれる。AIには任せられない人間でなければできない仕事が、高付加価値を生み、成長発展に資するのではないでしょうか。
弁護士・社会保険労務士 澤井 利之
