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従業員の副業を禁止してもいいの?

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1.はじめに

 お客様から、「従業員が会社に無断で副業をしている」、「従業員が部下にパワハラをしているかもしれない」、「業務上の指示に従わない従業員がいる」など、従業員とのトラブルに関する相談を受けることがあります。
 法的トラブルというと、対外的なトラブルを思い浮かべる方も多いと思いますが、社内で従業員とのトラブルを抱えている会社も多い印象です。
 そのため、今月と来月のコラムでは、従業員とのトラブルに関する会社向けの記事を作成することにしました。メールマガジンを読んでくださる皆様のお役に立てる内容にしていければと思っていますので、よろしくお願いいたします。

2.従業員の副業について

 今回は、従業員の副業についてお話します。就業規則で従業員の副業を全面的に禁止している会社も散見され、「副業を理由に従業員に懲戒処分を下せないか」という相談を受けたことがあります。

(1)副業の全面禁止は難しい

 従業員が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的に従業員の自由であるとされており、昨今の裁判例でも、副業を認める方向での検討がされることが多くなっています。
 厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」でも、「副業・兼業を禁止、一律許可制にしている企業は、副業・兼業が自社での業務に支障をもたらすものかどうかを今一度精査したうえで、そのような事情がなければ、労働時間以外の時間については、労働者の希望に応じて、原則、副業・兼業を認める方向で検討することが求められる」とまで言われています。
 そのため、副業が本業に支障をもたらさない場合には、就業規則で副業を全面的に禁止しても、そのような就業規則は無効と判断される可能性が高いと考えられます。従業員が労働時間以外に副業を行うことは、原則として自由であると考えていただいた方が良いと思います。

(2)副業を禁止できるケース

 従業員の副業によって、本業に支障が出てしまうような場合にまで副業を認めてしまうと、会社の業務遂行に支障が生じてしまいます。そのような場合も含め、厚生労働省の「モデル就業規則」では、以下のようなケースで例外的に従業員の副業を禁止できることが示されています。

 ① 本業の労務提供に支障がある場合(例:副業が長時間にわたって睡眠不足になり、本業でミスが頻発する場合など)

 ② 業務上の秘密が漏洩する場合(例:同種の商品を製造する会社で副業を行い、商品製造のノウハウ等が流出する場合など)

 ③ 競業により自社の利益が害される場合(例:同業のライバル企業で勤務する場合など)

 ④ 自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合(例:反社会的な内容の副業を行っている場合など)

    (3)会社としての対策

     このように、昨今では、従業員は、原則として自由に副業を行うことができ、会社は、例外的な場合のみ副業を禁止できると考えられています。就業規則で副業を全面的に禁止しても、就業規則が無効と判断されてしまえば、そのような規定を設ける意味がありません。
     会社としては、就業規則で従業員の副業を全面禁止するのではなく、法的にも副業の禁止が有効と認められるケースのみに限定して禁止するという対応が望ましいと考えられます。
     ただし、従業員が副業をしているか、どのような副業をしているかを把握しなければ、実効的な規制を行うことは困難です。そのため、会社内で副業に関する実情を把握するため、副業の事前申請や定期的な報告を行うことを義務付けると良いと思います。
     このような対応を行えば、会社は、従業員がどのような副業を行っているのか把握でき、禁止されるケースの副業を行っている場合には制止を求めることが可能となります。

    3.最後に

     今回のコラムでは、従業員の副業について説明させていただきました。
     次回以降も、従業員とのトラブルに関し、会社側の視点から記事を書いていこうと思いますので、今後もお読みいただければ幸いです。

    弁護士 髙塚 慎一郎