1. 公布日・施行日
公布日:2024年5月17日
施行日:2025年10月1日
※施行日後「雇用保険法」を改正法といいます。
2. 知っておくべき主な改正ポイント
① 教育訓練休暇給付金制度の概要
② 事業主が対応すべき事項
3. 改正の概要
これまでは、労働者が自発的に教育訓練に専念するために仕事から離れる場合、その訓練期間中の生活費を支援する仕組みがなく、労働者が主体的に能力開発することを躊躇してしまうという問題がありました。この問題に対処するため、雇用保険法が改正され、教育訓練休暇給付金の制度が創設されました。
教育訓練休暇給付金の概要は以下のとおりです。
| 対象者 | ・雇用保険被保険者 ※高年齢被保険者、短期雇用保険特例被保険者、日雇労働被保険者は対象外 |
| 支給要件 | ・教育訓練のための休暇(無給)を30日以上取得すること ・休暇開始前2年間に12カ月以上の被保険者期間があること ・被保険者期間が5年以上あること ※離職期間があったとしても12カ月以内であれば離職前後の期間を通算できる |
| 支給対象 となる休暇 | ・以下の全ての要件を満たす休暇 ① 就業規則や労働協約等に規定された休暇制度に基づく休暇 ② 労働者本人が教育訓練を受講するため自発的に取得することを希望し、事業主の承諾を得て取得する30日以上の無給の休暇 ③ 次に定める教育訓練等を受けるための休暇 (1)学校教育法に基づく大学、大学院、短大、高専、専修学校又は各種学校が提供する教育訓練等 (2)教育訓練給付金の指定講座を有する法人等が提供する教育訓練等 (3)職業に関する教育訓練として職業安定局長が定めるもの(司法修習、語学留学、海外大学院での修士号の取得等) |
| 給付内容 | ・離職した場合に支給される基本手当の額と同じ ・給付日数は被保険者期間に応じて90日、120日、150日のいずれか |
| 国庫負担 | ・給付に要する費用の4分の1又は40分の1 |
4.事業主が対応すべき事項
教育訓練休暇制度を就業規則または労働協約等に規定し、労働者へ周知する必要があります。周知方法の具体例としては、就業規則を常時見やすい場所へ掲示する方法や、書面を労働者へ交付する方法、社内の共有フォルダ等に保存して常時確認できる状態にすること等があげられます。
また、労働者から教育訓練休暇の取得について申し出があった場合、事業主と労働者は調整の上合意し、合意後、事業主からハローワークに対して必要書類を提出します。必要書類の書式・詳細については、厚生労働省のホームページをご確認ください。
なお、解雇や雇い止めを予定している労働者に対して教育訓練休暇給付金の支給対象となる教育訓練休暇を取得させることは認められていません。虚偽の届出を行った場合、事業主に対して6月以下の拘禁又は30万円以下の罰金が科される可能性がありますのでご注意ください。
5.まとめ
今回の改正により、教育訓練休暇給付金制度を利用するためには、就業規則や労働協約の規定の創設を行うことが必要になりました。そのため、自社における就業規則や労働協約の内容を変更することが求められます。変更を行うにあたって疑問点や不明点がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
弁護士 森谷 拓朗
弁護士 澤口 桜子
