1. 公布日・施行日
公布日:2025年6月11日
施行日:2026年12月1日
※以下現行の「公益通報者保護法」を「現行法」といい、令和8年12月1日施行の「公益通報者保護法」を「改正法」といいます。
2. 知っておくべき主なポイント
① 公益通報者の範囲の拡大
② 公益通報を理由とする不利益な取扱いの抑止
3. 概要
(1)公益通報者保護制度とは
従業員や退職後1年以内の退職者・役員が、不正の目的でなく、勤務先やその役員・従業員による一定の違法行為を、組織内の通報窓口、権限を有する行政機関又は報道機関等に通報することを「公益通報」といいます。 公益通報者保護制度は、このような「公益通報」を行った者を保護するため、公益通報をしたこと理由に解雇したり、降格・減給等の不利益な取り扱いをすることを禁止しています。

(2)事業者の体制整備の徹底(刑事罰の新設)
- ア 従事者指定義務とは
- 事業者が公益通報に適切に対応するための体制を整備するため、常時使用する従業員の数が300人を超える事業者は、窓口で通報を受け付ける者や通報を受けて調査を行う者、調査結果を踏まえて是正措置を実施する者等を「従事者」として指定する義務があります。
- これを「従事者指定義務」といい、現行法では、従事者指定義務に違反する事業者に対しては、国がその報告を求めたり、指導や勧告を行うことができると定められています。
- イ 改正法の内容
- 改正法では、従事者指定義務に違反する事業者が、正当な理由なく勧告に従わない場合、是正措置を行うように国が命令を出すことができることや、命令に違反した場合には、刑事罰(30万円以下の罰金)が新設されました。
- また、現行法で定められていた報告徴収権限に加えて、立入検査権限も新設され、検査拒否に対しては、刑事罰(30万円以下の罰金)が新設されました。
(3)公益通報者の範囲拡大
公益通報者保護制度で保護される「公益通報者」の範囲については、従前、労働者、退職者及び役員と定められていましたが、改正法では、事業者と業務委託関係にあるフリーランスや、業務委託関係が終了して1年以内のフリーランスも追加されました。
改正法の施行後は、上記のフリーランスに対し、公益通報をしたことを理由に業務委託契約を解除するなどの不利益な取扱いを行うことは禁止されますので注意が必要です。
(4)公益通報を阻害する要因への対処
事業者と労働者等との間で「公益通報しない」旨の合意が締結されてしまうと、その後に違法行為が判明した場合であっても、公益通報が阻害されてしまいます。このような事態を防ぐため、改正法では、事業者が労働者等に対して「公益通報しない」旨の合意をすることを求めることなどにより、公益通報を妨げる行為をすることが禁止され、これに違反してされた合意等の法律行為を無効とすると定められました。
また、事業者が、正当な理由なく、公益通報者を特定することを目的とする行為をすることも禁止されました。
(5)公益通報を理由とする不利益な取扱いの抑止・救済の強化
現行法でも公益通報を理由とする解雇等の不利益な取扱いは禁止されていましたが、公益通報から時間が経ってから不利益な取扱いがされた場合に、公益通報と不利益取扱いとの関係性が不明になるという問題がありました。
そこで、改正法では、通報後1年以内に行われた解雇又は懲戒は、公益通報を理由としてされたものと推定されることが定められました(立証責任の転換)。これにより、事業者が公益通報者を通報後1年以内に解雇等する場合には、事業者の側において、解雇等の理由が公益通報でないことを立証する必要が生じますので、注意が必要です。
また、上記のような立証責任の転換と合わせて、公益通報を理由として解雇又は懲戒をした者に対し、直ちに罰則(6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金)を科すことが可能となりました。
4.まとめ
以上のように、公益通報者の保護が強化されましたので、従業員が公益通報を行った場合には企業もこれに対して慎重に対応しないと刑事罰等を受けるおそれもあります。社内で公益通報者保護制度を定める場合や、従業員が公益通報を行った場合には、改正法に違反しないように慎重に対処する必要がありますので、何かお困りの際は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。
弁護士 森谷 拓朗 弁護士 河合 響子
