1.はじめに
前々回から、「他人事ではない?!不動産にまつわる怖い話」として、不動産をテーマに、怖い話をお送りしています。
第三回となる今回は、不動産の売買の際には検討が必須である「契約不適合責任」をテーマにお送りしたいと思います。
2.契約不適合責任とは?
皆様は、契約不適合責任という言葉を聞いたことはありますでしょうか。契約不適合責任は、令和2年の債権法改正の際に新たに設けられた規定になるため、法律に関わる機会がないと、聞き覚えがない方もいらっしゃるかもしれません。もしかしたら、債権法改正の前に設けられていた「瑕疵担保責任」の方がピンとくる方が多いかもしれません。
民法の解釈としては、債権法改正前は法定責任説という考え方が有力であったのに対して、債権法改正においては契約責任説という考え方が採用されており、これに伴う変更もあります。しかし、債権法改正自体がテーマではありませんので、今回は、不動産の売買という場面に限って、説明いたします。
3.契約不適合責任の免責
不動産の売買の際に、売主が最も気になる事項は、当職の経験上、契約不適合責任であると感じています。もし地中から過去に存在していた建物の基礎が出てきたり、建物の内部がシロアリの被害に遭っていた場合は、買主から契約の解除や損害賠償請求を受ける可能性があります。宅地建物取引業者のように専門的知見やネットワークがある場合であればともかく、例えば個人の方が相続により取得した不動産を売却するような場合に、このような事項を調査することは、資金の準備や適切な専門家への依頼といった観点から、決して容易ではありません。
そこで、不動産の状況を調べることなく、かつ法的責任を負うことなく、現状ありのままの姿で不動産を売買するという方法が採られることがあります。具体的には、契約不適合責任(目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときに生じる責任)を免責するという方法が採られます。契約不適合責任は、強行規定(当事者の合意で排除することができない規定)ではないため、このような方法を採ることができます(民法第572条)。
4.「現状有姿渡し」で大丈夫?!
このような方法を採ることを目的として、不動産売買契約の特約に「本物件を現状有姿のまま引渡す」と記載されたものを目にすることがあります。ところが、このような「現状有姿渡し」の記載は、債権法改正前の裁判例での判断にはなりますが、残念ながら、契約不適合責任を免責するものではないと考えられています。すなわち、「現状有姿渡し」の文言は、契約後引渡しまでに目的物の状況に変動があったとしても、売主は引渡し時の状況のまま引き渡す債務を負担しているにすぎないというものであり、売主の瑕疵担保責任が免責されるということはできないと解されています(東京地裁平成28年1月20日判決判例秘書登載)。
そのため、契約不適合責任の免責を希望する場合は、現状有姿渡しとするとの記載だけでは足りず、契約不適合責任を免責することを明確に記載する必要があります。なお、世の中には、多くの記載例が散見されますが、一例として詳細を定めた記載を念のためお知らせいたします。
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買主は、本物件について、建築物の基礎及び産業廃棄物を含む地中埋設物の有無、建築基準法及び都市計画法を含む法令への適合性の有無、事件に起因する心理的瑕疵の有無並びに土壌汚染対策法及び同法施行令に定める物質で同法施行規則に定める基準を超える特定有害物質の有無に関する調査を行っていないことを承知し、これを前提として本物件を購入するものであり、引渡後にこれらが発見された場合であっても契約不適合に該当するものではなく、売主に対し、追完請求、代金減額請求又は損害賠償請求をすることができず、本契約を解除することはできないことを確認します。
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5.宅地建物取引業者の特則
なお、宅地建物取引業者が売主となる場合は、契約不適合責任を負う期間が2年以上となる特約をする場合を除き、買主が不利になる特約をしてはならないとされており、これに違反する特約は、無効となります(宅地建物取引業法第40条)。また、宅地建物取引業者は、かかる規定に違反した場合は、「不正又は著しく不当な行為」に該当するものとして、業務停止処分の対象となる可能性があるので、ご注意ください(宅地建物取引業法第65条第2項第5号)。
6.最後に
今回は、「他人事ではない?!不動産にまつわる怖い話」の第三回として、契約不適合責任をテーマに、怖い話をお送りいたしました。不動産の売買は、取引金額が高額であることから、一度紛争に発展してしまうと、多額の費用や多くの時間を費やさざるを得なくなってしまいます。もし不動産の売買をする場合は、あらかじめ弁護士に相談し、紛争の発生を予防するようにしてください。
弁護士 田上 淳一
