当事務所のHPはこちらです。https://ambitious.gr.jp/

【宇宙法6】宇宙旅行の法的課題

この記事は約4分で読めます。

1.はじめに 

 前回のコラムでは、「【宇宙法5】宇宙ビジネス ~サブオービタル旅行~」とのタイトルで、宇宙旅行に関する法律やビジネスについて紹介させていただきました。今回は、ちょうど最近、宇宙保険というニュースを見かけましたので、宇宙旅行に関する法律や保険商品に少し深堀してご紹介させていただきます。

2.宇宙でも保険に入る時代に・・・

 こちらはネットで見かけたニュースの一部ですが、大手保険会社は宇宙ビジネスに関連した保険事業にも取り組んでいるようです。
 たとえば、人工衛星等の損害を補償する保険としては、打上げ前保険(打上げまでの地上での輸送における損害)や打上げ保険(打上げ失敗による衛生等の損害)があり、また衛星等の運用により生じた第三者への賠償責任を補償する保険としては、宇宙賠償責任保険があるようです。

 また、人工衛星等の打上げに関するビジネスだけでなく、宇宙旅行ビジネスにも旅行者向けの保険商品を提供しているようです。以下では、東京海上日動火災保険株式会社の2024年4月8日付「宇宙旅行を支援する取り組みの開始~宇宙旅行者向けの保険提供と宇宙関連情報サイト「SpaceMate」の開設~」により紹介されている、宇宙旅行者向けの保険の補償概要を紹介させていただきます。

【補償概要】

  • 宇宙への出発日から地上に帰還した日までに発生した傷害により旅行者ご自身が死亡、または後遺障害が生じた場合に補償します。
  • 搭乗機の打ち上げ日の前、および帰還後の保険期間中に発生したけがや疾病によって治療が必要となった場合等に補償します。

 (本保険は海外旅行保険での引受けとなります。個別の旅行形態等に応じて補償範囲の設定やリスク評価を行い、提供(保険引受)可否を判断します)

 https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/company/release/pdf/240408_01.pdf


3.宇宙旅行における法的課題

 前回は、宇宙旅行のひとつとして、サブオービタル旅行(概ね高度100kmに滞在し、無重力体験や宇宙から地球を見るという体験をした後、1~2時間かけて地球へと帰還するというもの)を説明しました。一度は経験してみたいと思われる宇宙旅行ですが、やはり一定のリスクはありますし、日本では法的観点からも十分な法的整備が追いついていないというのが現状かと思います。

 宇宙旅行は、運送人である宇宙旅行事業者(サブオービタルの運航者)が、旅行者を地上から宇宙空間まで移動させるという「旅客運送契約」の一種とする見方が一般的であると言われています。

 旅客運送契約では、運送人には、乗客を安全に移動させる義務を負いますが、他方で、宇宙飛行は様々なリスク(墜落や飛行の失敗、放射線の影響等)が想定されるため、事業者としては、乗客に事故や身体の変調があっても免責又は責任の軽減をさせたいという意向が生じます。

 しかし、仮に事業者と旅行者との間でそのような免責に関する合意があったとしても、日本では「消費者契約法」が適用されると言われており、当該合意が完全には有効とは認められない可能性が高いです。この点、宇宙開発の先進国である米国では、宇宙旅行に伴う危険を十分に開示することを前提に、宇宙旅行者が自己責任のもと参加を決定できるようにするため、事業者は宇宙旅行者から「インフォームド・コンセント」を取得する必要がある、との内容の法整備をしているようです。

 宇宙旅行ビジネスを発展していくためには、既存の法律との整合性、合理性のある法整備を進めて行くことが今後の課題の1つになっているものと考えられます。


4.北海道での宇宙ビジネス~STARTUP HOKKAIDO~

 令和6年4月2日、北海道での宇宙ビジネスを支援するキックオフイベント(STARTUP HOKKAIDO SPACE ACCELERATOR PROGRAM)に参加してきました。詳細は、「STARTUP HOKKAIDO実行委員会」のをご参照ください。

 https://startuphokkaido.com/news/1519/


 同イベントでは、プログラム採択6者による事業アイディアの発表が行われ、審査の結果、最優秀賞のSTARTUP HOKKAIDO賞は株式会社FT&M 古川純さんの「若者よ宇宙を目指せ、衛星データ活用北海道発高品質ワイン」が、SPACETIDE賞にはSPACEAGENT株式会社鷹尾伸一さんの「国際宇宙ゴミステーション」が、オーディエンス賞にはStellarForecast藤野沙季さんの「太陽活動データを用いたオーロラ予測システムで運に頼らない観光体験を~Gamble-Free Aurora Trip!~」が選出されました。
 いずれの事業アイディアも興味深く、北海道での宇宙ビジネスを活性化させていくものと感じました。また、このようなイベントがあれば参加してみたいと思います。

弁護士 日西 健仁