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【宇宙法1】宇宙法とは何か?

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  1. ごあいさつ
     
     はじめまして。アンビシャス総合法律事務所の弁護士日西健仁と申します。
     当事務所からメールマガジンを配信することが決まり、何を書こうかなと考えていたところ、先輩弁護士から「宇宙法がいいんじゃない」という話をいただきました。宇宙法・・・?

     私は、小さいころ、家族によくプラネタリウムに連れて行ってもらっていたこともあり、幼少期から漠然と宇宙に興味を持っていました。また、司法試験を受験していた頃も、(現実逃避を兼ねて)寝る前には毎晩、YouTubeで宇宙に関連する動画をみていたことを思い出します。
     
     私自身、宇宙には非常に興味があるのですが、宇宙法という分野は、非常に恥ずかしながらも精通しているわけではありません。ただ、自分の興味関心のある宇宙について、毎日仕事で関わっている法律とどのように関係しているのか、宇宙ビジネスに関してどのような法律があるのか、このコラムを通じて私自身も勉強したいと考えております。

  2. 宇宙法とは
     
     さて、「宇宙法」とは何か。冒頭でも、宇宙法という言葉を使っていますが、実は「宇宙法」という名称の法律はありません。近年、宇宙ビジネスが話題になっており、宇宙ビジネスに精通した起業家や法律家が「宇宙法」という言葉を使っていることを見聞きしますが、宇宙法とは、以下の4つの分類に整理して説明されています(「宇宙ビジネスのための宇宙法入門(第2版)」参照)。

    ①国際宇宙公法(国家間のルール)
    国と国との間を規律するルール、すなわち国家間の活動を律するルールです。
    代表的なものとして、「宇宙条約(正式名称は『月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約』と長いです…)」があり、他にも「宇宙救助返還協定(宇宙飛行士の救助及び送還並びに宇宙空間に打ち上げられた物体の返還に関する協定)」、「宇宙損害責任条約(宇宙物体により引き起こされる損害についての国際的責任に関する条約)」、「宇宙物体登録条約(宇宙空間に打ち上げられた物体の登録に関する条約)」、「月協定(月その他の天体における国家活動を律する協定)」があります。

    ②国内宇宙法(国と私人との間のルール)
    国と私人との間を規律するルールです。国が民間の活動を具体的に規律するためのルールです。
    日本では、2016年に制定された「宇宙活動法(人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律)」と「衛星リモートセンシング法(衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律)」があります。たとえば、ロケットや人工衛星の打ち上げを行うときに必要となる手続や許可は何か、人工衛星から取得したデータはどのように取り扱うかなどが規定されています。

    ③宇宙私法(私人間のルール)
    私人と私人との間を規律するルールです。
    これは宇宙ビジネスに関わらず、日常社会生活でのビジネスと同様に契約を規律するルールです。近い将来、宇宙旅行をするときの契約も一例に挙げられます。

    ④国際宇宙私法(各国私法の適用関係を調整するルール)
    私法は私人間の活動を規律するものですが、国際私法は各国の私法の適用関係を調整するルールです。
    たとえば、宇宙空間で、異なる国の企業が打ち上げた宇宙物体同士の衝突によって損害が発生した場合、どの国の法律に基づいて損害賠償を考えるかという問題を調整するルールです。

  3. 北海道と宇宙ビジネス
     
     このように、宇宙に関する法律は多くあり、その内容を把握するのは容易ではありませんが、宇宙ビジネスへ挑戦する企業にとっては、リスクマネジメント・法令遵守等の様々な局面で重要な検討事項になります。
     近年、宇宙ビジネスは急速な広がりをみせていますが、国内でも、特に北海道は、宇宙ビジネスの展開においては有利な地域と言われています。これは、ロケットを安全に打ち上げる場所であること、一次産業など衛星データを利用する多くのユーザーが所在していること、ロケットや衛星を開発する企業や大学等の研究機関も集積する恵まれた地勢的特徴があるからだといわれています。私としても、自分が住んでいる北海道で、宇宙産業が発展してくれれば非常に誇らしく思います。

  4. 小括
     
     本稿では、宇宙に関連する条約や法律を紹介させていただきましたが、次回以降は、宇宙法の内容に踏み込んで説明したり、宇宙ビジネスの具体例を紹介したりするなどして、少しでも宇宙(法)に興味を持ってもらえるように連載していきたいと思います。

弁護士 日西 健仁