「知的財産」という言葉を目にしたことがある方は多いでしょう。
「知的財産」とは、法律上は、①発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの、②商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの、及び、③営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報と定められています(知的財産基本法第2条1項)。
この知的財産は、以前は「無体財産」という名称でした。私たちの周りには、土地建物(不動産)や家具、家電、食料品など(動産)のモノで溢れています。こういうモノは売買契約によって所有権が移動したり、賃貸借契約によって借りる権利が発生したりしますが、形あるモノ(=有体物)の存在が前提です。これに対して、「無体財産」というのは、発明などの頭の中で考えた“形の無いもの”です。そこで、以前は形の無い財産という意味で「無体財産」という名称が使われていました。頭の中で考えたものは、何でも「無体財産」として法律上保護されるわけではなく、特許法、著作権法などの法律によって「こういうものを発明として保護する」「こういうものを著作物として保護する」とされているもののみについて法律上の権利(特許権、著作権)が認められています。
今は「無体財産」という名称より、「知的財産」という名称が一般的となっていますが、形があるかないかという点より、頭の中で考え出した知的創造物等が対象であるということを強調して「知的財産」という名称が使われるようになりました。
知的財産法(特許法、著作権法など)は、まだまだマイナーな法、別の言い方をすれば事業活動でも私生活でも関わったり意識したりすることが少ない法分野です。
現代は、技術の発展、コンピュータ・スマートフォンその他デジタル機器の普及、ネットワークの整備などにより、だれでも創造者(例えばYouTubeクリエイター)になることができ、膨大な量の情報を誰でも発信でき、誰でも受信できる時代です。世界中を飛び交っている情報の中には、知的創造物等も大量に含まれており、自らの知的財産を守ること、他社の知的財産を無許可で使わないことに最新の注意を払わねばならない時代です。
しかしながら、容易に情報を取得や加工することができるために、その取得した情報の価値を考えることなく、(積極的な害意なく)無邪気に価値ある情報を流通させてしまっている人が多数いる時代でもあります。
技術発展→情報化社会→知的財産の重要性の向上のサイクルが今後も続いていくことは間違いなく、知的財産の保護が一層重要となっていくでしょう。そのため、知的財産法は、マニア向けの法分野ではなく、誰もが知っておくべき法分野になっていくでしょうし、そうなって知的財産が正しく取り扱われるようになってほしいものです。
弁護士・弁理士 安藤 誠悟
