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著作権法の保護の対象

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1.はじめに

 私のコラムでは知的財産に関するトピックを紹介していきます。前回は知的財産全体についてでしたが、今回は著作権が何を保護しているのかという点について説明します。

 今は、インターネットやコンピュータ技術の急速な進歩により、大量のコンテンツをいつでもどこでも見聞きすることが可能となりました。インターネットブラウザで見るホームページやブログ、YouTubeなどの動画アプリで見る動画や音楽、Netflixなどのサービスで見ることのできる映画、ドラマ、バラエティ番組等のコンテンツは、どれも知的財産の観点では、著作権によって保護されています。

 このネット及びコンピュータの普及・発展により、著作権の重要性は、インターネット登場前に比べて飛躍的に高まっています。

2.保護されるのは「表現」

 著作権法によって、著作権などの権利で保護されるものを著作物といいます。著作権法では、著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」(第2条1項1号)と定めています。

 今回のコラムで強調したいのは、「思想又は感情を創作的に表現したもの」の下線部、「表現したもの」が保護対象となっているということです。

 著作権はあくまで表現を保護するものであり、表現の素となっているアイディアや技術等は保護の対象ではありません。とても新しい医学的研究が成し遂げられたとして、その研究成果は論文として発表されるとします。その研究成果自体、例えば癌を劇的に食い止める治療自体は、特許権などの保護対象ではあっても、著作権の保護対象ではありません。著作権で保護されるのは、論文で記されている表現となります。ですから、同じ治療について別の人が別の文章で表現した場合には、取り上げている対象は同じでも、著作権を侵害していることにはなりません。

 わかりづらいかもしれませんので、別の例を挙げます。ある漫画家が、犬型ロボットが未来からやってきて、少女の家に住むことになり、未来のグッズを使って少女のトラブルを解決してあげる漫画を描いたとします。これを読んで「ドラえもんの盗作だ!」と感じる人は多くいるでしょう。しかし、未来から来たロボット、子供で未来のグッズで助けるという共通点は、物語の設定や世界観というアイディアであって表現されたものではありません。この漫画の中で描かれているもの=表現されているものが、ドラえもんの漫画やアニメで描かれているものと似ているのでなければ、著作権侵害の問題とはなりません。

3.料理のレシピ

 これまでに何度か創作料理のレシピを著作権として保護されないかという相談を受けたことがあります。料理の製法について、場合によっては発明として特許を取得することができる場合もありますが、一般の飲食店で提供している料理の特許を出願するのは極めて限られたケースかと思います。

 レシピが著作権で保護されるならば、特許のように出願をすることなく権利が発生しますが、残念ながら保護されません。創作料理の根幹は、創作した人のアイディアであって、レシピには、例えば材料の内容と量として「豚バラ肉200グラム、ピーマン3個」と表現されるだけです。とある創作料理に「豚バラ肉200グラム、ピーマン3個」を使うことが非常に独創的であっても、「豚バラ肉200グラム、ピーマン3個」という表現は、どこにでもあるレシピとしての材料の種類・量の表現であり、著作物として保護されるような表現とはなりません。また、仮に、調理手順を含めたレシピの内容に、創作的な表現が含まれていて著作物になりうる場合、そのレシピの表現と同じような表現の同じ料理のレシピを書けば著作権侵害になるでしょうが、そのレシピに基づいて料理をすることは著作権侵害とはなりません。つまり、ある有名シェフがある料理を創作してレシピを残したとして、そのレシピを盗み見た後輩シェフが、別の店でその料理を客に提供しても、著作権侵害という形で訴えることはできません。

 なかなかわかりづらいかもしれませんが、著作物として保護されるのは「表現」であって、アイディアではないということを、なんとなくでもわかっていただけると、著作権についての理解はしやすくなると思います。

 弁護士・弁理士 安藤 誠悟