1.はじめに
前回は宇宙に関連する条約や法律を紹介させていただきました。
本稿では、宇宙政策に関する初めての国内法で、2008年5月に成立・公布され、同年8月に施行された「宇宙基本法」の概要について説明します。
2.宇宙基本法とは
宇宙基本法とは、日本における宇宙開発及びその利用に関する基本理念・基本事項を定めた法律です。
第1条に「この法律は、科学技術の進展その他の内外の諸情勢の変化に伴い、宇宙の開発及び利用(以下「宇宙開発利用」という。)の重要性が増大していることにかんがみ、日本国憲法の平和主義の理念を踏まえ、環境との調和に配慮しつつ、我が国において宇宙開発利用の果たす役割を拡大するため、宇宙開発利用に関し、基本理念及びその実現を図るために基本となる事項を定め、国の責務等を明らかにし、並びに宇宙基本計画の作成について定めるとともに、宇宙開発戦略本部を設置すること等により、宇宙開発利用に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民生活の向上及び経済社会の発展に寄与するとともに、世界の平和及び人類の福祉の向上に貢献することを目的とする」(下線部は筆者)として、法の目的が規定されています。
これまでの日本における宇宙政策が、科学技術・研究開発を重視してきた一方で、国民生活の向上や産業・経済の発展に貢献できていないという状況がありました。このような状況を打破するため、宇宙基本法が制定されました。
3.法の基本理念
宇宙基本法は、日本における宇宙開発利用に関する以下の6つの基本理念を規定しています。
①宇宙の平和的利用(第2条)
宇宙開発利用は、宇宙開発利用に関する条約その他の国際約束の定めるところに従い、 日本国憲法の平和主義の理念にのっとり、行われるものとすること
②国民生活の向上等(第3条)
国民生活の向上、安全で安心して暮らせる社会の形成、災害、貧困その他の人間の生存及び生活に対する様々な脅威の除去、国際社会の平和及び安全の確保並びに我が国の安全保障に資するよう行うこと
③産業の振興(第4条)
宇宙開発利用の積極的かつ計画的な推進、研究開発の成果の円滑な企業化等により、我が国の宇宙産業その他の産業の技術力及び国際競争力を強化すること
④人類社会の発展(第5条)
人類の宇宙への夢の実現や人類社会の発展に資するよう行うこと
⑤国際協力等の推進(第6条)
国際社会における役割を積極的に果たすとともに、国際社会における我が国の利益の増進に資するよう行うこと
⑥環境への配慮(第7条)
宇宙開発利用が環境に及ぼす影響に配慮して行うこと
4.宇宙開発利用の司令塔
宇宙開発に関しては、これまで経済産業省、文部科学省、国土交通省等の関係省庁が各々担当していたのですが、宇宙基本法の制定により、一元化し、より効率的・戦略的な宇宙開発利用の実践が可能になりました。
宇宙基本法により、宇宙開発利用に関する施策を総合的かつ計画的に推進することを目的として、司令塔として内閣に「宇宙開発戦略本部」を設置しました(第28条)。本部長は内閣総理大臣であり、副本部長は内閣官房長官と宇宙開発担当大臣で、その他のすべての国務大臣が本部員とされています(第28条、第29条、第30条)。
5.宇宙基本計画
宇宙開発戦略本部は、宇宙開発に関する基本的な計画(宇宙基本計画)を定めることになっています(第24条)。2009年6月に初めての宇宙基本計画が発表されましたが、世界的な宇宙環境の変化に対処するため、昨今は短いスパンで宇宙基本計画が改訂されています。
直近では2023年6月に宇宙基本計画が改訂されたばかりです。以下に一部を引用しますが、近い将来、宇宙産業が大きく発展・拡大していくことが期待できます。
「宇宙産業を日本経済における成長産業とするため、宇宙機器と宇宙ソリューションの市場を合わせて2020年に 4.0 兆円となっている市場規模を、2030 年代の早期に 2 倍の 8.0 兆円に拡大していくことを目標とする」
(2023年6月13日閣議決定・宇宙基本計画10頁)
6.小括
本稿では、宇宙基本法の概要を紹介させていただきました。宇宙基本法は、宇宙ビジネスと直接的な関係性は多くないかもしれませんが、日本における宇宙政策を正確に把握するためには重要な法律ですので、この機会に紹介させていただきました。宇宙基本計画は内閣府のホームページ(https://www8.cao.go.jp/space/plan/keikaku.html)でみることができますので、興味のある方はご参照ください。
弁護士 日西 健仁
