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となりの空き家が所有者不明で困ってます…

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先日、空き家についてのご相談がありました。

お話しを聞いてみると、「となりの空き家の屋根からの落雪で被害を受けていますが、この空き家の所有者が誰か分からず困っています」とのことでした。

このような悩みをもっている方は、最近増えてきているのではないでしょうか。

今回は、空き家の所有者が不明の場合の対策について書いていきたいと思います。

総務省の令和5年度住宅・土地統計調査によると、2023年10月1日現在の全国の空き家数は900万戸と過去最多、この空き家のうち、賃貸・売却用や二次的住宅(別荘など)を除く空き家は385万戸で、2018年と比べて、37万戸増加し、総住宅数に占める割合は5.9%になっているそうです。

つまり100戸のうち約6戸が、賃貸・売却などの予定もなく、ただただ空き家になっているというのが現状です。

出典:「令和5年住宅・土地統計調査結果」(総務省統計局)

このように空き家が全国的に増加する中で、所有者が不明である空き家も増えてきています。

所有者不明の空き家が生じる主な原因としては、

*相続の際に登記の名義変更が行われないこと

*所有者が転居したときに住所変更の登記が行われないこと

などが考えられます。

例えば、長期間、相続登記をしないまま放置しておくことにより、相続に関係する者が増えていき、所有者を特定することが極めて困難になってしまいます。

出典:政府広報オンライン( https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202203/2.html

 

所有者が不明の場合、当然家を管理する人がいませんから、被害にあっても誰に何を言えばよいのか分からず困ってしまいます。

そこで、国の対策のひとつとして、2023年4月から「所有者不明土地・建物の管理制度」が新たに設けられました。

この制度は、調査を尽くしても所有者やその所在を知ることができない土地・ 建物について、利害関係人が地方裁判所に申し立てることによって、所有者に代わってその土地・建物の管理を行う管理人(弁護士や司法書士などを想定)を選任してもらうというものです。

選任された管理人は、土地・建物を管理するほか、裁判所の許可を得て土地・建物を売却処分したり、建物の解体処分を行ったりすることもできます。

所有者不明の土地・建物の対策としては、従前から、「不在者財産管理制度」や「相続財産管理制度」というものがありました。

これらの制度も、利害関係人が家庭裁判所に申立てることによって、所有者に代わって土地・建物を管理する管理人を選任してもらうというものですが、管理対象となる財産が不動産に限られず、所有者のすべての財産となることから、不動産以外の財産が多い場合には、管理人にとって大きな負担となるだけでなく、管理期間も長期化し、管理費用も高額になる傾向にありました。

一方で、所有者不明土地・建物の管理制度では、管理対象となる財産は、土地・建物に限定されますので、上記のような負担が軽減されることが考えられます。

なお、所有者不明土地・建物の管理制度は、以下のような利害関係があると判断された場合にも利用することができます(利害関係の有無は最終的には裁判所が判断します)。

① 所有者不明土地・建物が適切に管理されないために不利益を被るおそれのある隣接地所有者

② 共有者の一部が不特定又は所在不明となった共有者

③ 土地を取得してより適切な管理をしようとする公共事業の実施者

④ 購入計画に具体性があり土地建物の利用に利害が認められる民間の購入希望者

つまり、冒頭のご相談者様は①に該当するため、この制度を利用できる可能性があります。

ただし、この制度を利用するためには、申立人が管理費用を裁判所に予納する必要があります。

予納額については、「不在者財産管理制度」や「相続財産管理制度」の予納額(目安20~100万円程度)に比べて、対象の財産が不動産に限られていることから、低額になると見込まれます。

それでも費用負担のデメリットがありますので、安易にこの制度の利用をお勧めすることはできませんが、空き家問題の解決方法のひとつとして、一度検討してみていただければと思います。

司法書士 大宮 麻由美