当事務所のHPはこちらです。https://ambitious.gr.jp/

【建築6】トラブルの解決手段

この記事は約5分で読めます。

1.はじめに

 「戸建住宅を建築したが雨漏りがする」「リフォーム工事を発注したが当初の工事代金を超える追加代金を請求された」「注文者の意向に沿って施工を行ったのに注文者から苦情を申し入れられた」など建築に関するトラブルは多種多様であり、当事務所では、様々な立場の方からご相談を受けることがあります。
 トラブルの内容自体は多種多様ですが、多くの建築紛争に共通する特徴として、契約に基づいて実施すべき工事の具体的内容を確定することが困難なことが多い点や、建築に関する専門的・技術的知見が紛争解決の前提となる点などが挙げられます。このような建築紛争の特徴を踏まえ、それぞれの事案に応じた適切な解決手段を活用することが大切です。

 今回のコラムでは、建築に関するトラブルを解決するための手段をご紹介し、各解決手段の特徴などをご説明したいと思います。


2.任意交渉

(1)任意交渉とは?

 トラブルが生じたときに、まずは当事者間の話し合いで解決を模索する方法です。当事者同士の話し合いでは解決が難しい場合には、弁護士が代理人に就いて交渉に当たることもあります。

(2)任意交渉の特徴

 両者の納得できる解決方法が合意できれば早期解決できるという利点があります。
 一方で、当初から話し合いの余地がないような場合には、交渉を行うことにより、かえって紛争解決までに余計な時間がかかるおそれがあります。また、仮に相手方が合意内容に従わなかった場合には、直ちに強制執行(財産の差押え等)を行うことができないという弱点もあります(合意内容を公正証書した場合を除きます)。
 従前の話し合いの状況によっては、任意交渉を行わずに、後記「3」から「5」までの各手段を活用することも検討しましょう。


3.民事訴訟

(1)民事訴訟とは?

 裁判所が当事者双方の言い分を聞き、証拠を取り調べた上で、法律に基づいてどちらの言い分が正しいのかを判決により決定する制度です。

(2)民亊訴訟の特徴

 当事者間では話し合いの余地がない場合であっても、裁判所が中立公正な立場から、法律に基づく一定の解決方法を示します。仮に相手方が判決に従わなかった場合には、判決に基づいて強制執行を行うことができるという利点もあります。
 一方で、民事訴訟では、当事者双方の言い分や証拠を慎重に審理する必要があるため、判決に至るまでにある程度の期間を要するのが通常です。
 なお、審理を進めるに当たって建築に関する専門的知見を補う必要がある場合には、建築士等の専門家を「専門委員」として手続に関与させて説明を聴いたり(民事訴訟法92条の2)、「鑑定人」に指定された建築士等に対して質問(同法213条)を行う場合もあります。


4.民事調停

(1)民事調停とは?

 民事調停とは、上記の「民事裁判」のように判決により勝ち負けを決めるのではなく、話し合いにより両者の納得できる解決を図る手続です。民事調停では、上記の「任意交渉」とは異なり、一般市民から選ばれた調停委員が、裁判官とともに、紛争解決に当たります。

(2)民事調停の特徴

 両者の納得できる解決方法が合意できれば早期解決できるという利点があります。また、上記の「任意交渉」とは異なり、当事者間で合意した内容は、裁判所が作成する調停調書という書類に記録され、仮に相手方が合意内容に従わなかった場合には、この調停調書に基づいて強制執行を行うことができるという利点もあります。
 一方で、当初から話し合いの余地がないような場合には、民事調停を行うことにより、かえって紛争解決までに余計な時間がかかるおそれがあります。
 なお、話し合いの中で建築に関する専門的・技術的知見が必要な場合には、申立先の裁判所にもよりますが、調停委員のうち1名には建築士等の専門家が選ばれることが多く、建築専門家の意見を聞きながら解決方法を模索できます。


5.裁判外紛争解決手続(ADR)

(1)裁判外紛争解決手続(ADR)とは?

 裁判外紛争解決手続(ADR)とは、裁判所の手続(上記の民事訴訟や民事調停)を用いずに、裁判所以外の公正な第三者が関与して紛争解決を図る手続です。ADRでは、法務大臣が認証した民間団体(各分野の専門家で構成された団体)が、専門家の知見を活用して紛争の実情に即した迅速な解決を図ることが目的とされています。
 ADRという手続自体は、建築以外の紛争でも用いることができますが、建築紛争に関するADR機関としては、①各都道府県の弁護士会が設置する住宅紛争審査会、②公益社団法人民間総合調停センター、③国民生活センター紛争解決委員会、④建設工事紛争審査会などがあります。

(2)裁判外紛争解決手続(ADR)の特徴

 両者の納得できる解決方法が合意できれば早期解決できるという利点があります。また、選択するADRの機関や内容にもよりますが、現地調査費用が無料であるなどの手続費用が低廉であったり、短期間での解決(原則3~5回程度の期日での解決など)を目指しているという利点があります。
 一方で、当初から話し合いの余地がないような場合には、ADRを行うことにより、かえって紛争解決までに余計な時間がかかるおそれがあります。また、仮に相手方が合意内容に従わなかった場合には、裁判所の手続(上記の民事訴訟や民事調停)とは異なり、直ちに強制執行を行うことができないという弱点もあります(一部のADRを除きます)。

【解決手段の比較表】

手続費用解決までの期間強制執行の可否専門家の関与
任意交渉不要話し合いによる原則不可なし
民事訴訟訴額に応じる半年~数年可能一部関与あり
民事調停訴額に応じる話し合いによる可能関与する
ADR低廉短期間(数カ月)原則不可関与する


6.まとめ

 今回のコラムでは、建築紛争に関する多様な解決手段についてご紹介いたしました。
 お困りのケースで「任意交渉」「民事訴訟」「民事調停」「裁判外紛争解決手続(ADR)」のいずれの解決手段を用いるのが良いのかは、トラブルに至るまでの経緯やトラブルの内容等を踏まえて検討する必要がありますので、判断に迷うことがありましたら、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

弁護士 三本竹 寛