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他人事ではない?!不動産にまつわる怖い話

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1.はじめに

 前回から、「他人事ではない?!不動産にまつわる怖い話」として、不動産をテーマに、怖い話をお送りしています。

 第二回となる今回は、賃貸業を営む不動産オーナーが直面する「不動産の明渡し」をテーマにお送りしたいと思います。


2.「不動産の明渡し」とは?

 賃貸業を営む不動産オーナーが直面する最も身近な悩みの一つは、賃料未払ではないでしょうか。賃料未払が発生した場合は、当然未払賃料を支払ってもらわなければなりませんし、賃料未払が続く場合には、賃貸借契約を解除し、物件を明け渡してもらわなければなりません。また、賃料未払を放置してしまうと、金融機関への返済や新たな投資にも影響が生じかねません。

 未払賃料の支払や物件の明渡しは、理論上は、至極当然のことではありますが、もし借主が自発的に未払賃料の支払や物件の明渡しをしない場合は、裁判手続を通じて、強制的に実現しなければなりません。しかし、物件の明渡しについて、裁判手続を通じて実現する場合は、法律上の問題や経済的な問題が生じることがあり、想定している以上に時間を要したり、経済的な負担が生じることがあります。

 法律上の問題としては、①相手方の特定や②物件に残置された動産の処理といった問題があり、経済的な問題としては、③予納金の納付といった問題があります。以下、順にご説明いたします。


3.相手方の特定

 まず、一点目は、物件の明渡しをしなければならない相手方の特定です。裁判手続を行う場合は、相手方を特定したうえで、裁判書類の送達を行うとともに、言い分を聞く機会を設けなければなりません。

 居住用の物件であれば、相手方の特定が問題となることは、そこまで多くはありません。しかし、事業用の物件で、複数の人が共同で事業を経営し、物件を使用しているような場合や、無断で転貸借が行われているような場合は、借主ではない第三者を相手方として特定したうえで、裁判手続を行わなければならない場合もあります。

 一昔前には、占有屋と呼ばれるような人(暴力団等の反社会的勢力である場合も少なくはないと言われていました)が跳梁跋扈した時代もありました。裁判手続が始まると、転貸借で物件を借りて占有し、改めて相手方を特定しなければならないような状況を作り出し、裁判手続の円滑な進行を妨害するということもありました。

 このような事態が発生した場合は、占有移転禁止の仮処分という手続を行い、裁判手続の当事者をあらかじめ確定する必要があります(当事者の恒定といいます)。占有移転禁止の仮処分は、通常の裁判手続とは別の手続になりますので、別途弁護士費用が発生しますし、法務局に担保金を納付しなければならず、法律上も経済的にも負担が増えてしまいます。

(引用元:https://www.amazon.co.jp/%E5%8D%A0%E6%9C%89%E5%B1%8B%E2%80%95%E3%83%90%E3%83%83%E3%82%BF%E5%B1%8B%E5%95%93%E8%BC%94-C%E3%83%BBNOVELS-%E4%BC%8A%E9%87%8E%E4%B8%8A-%E8%A3%95%E4%BC%B8/dp/412500644X


4.物件に残置された動産の処理

 次に、二点目は、物件に残置された動産の処理です。物件に残置された動産は、明渡しの対象ではないため、原則として、物件から搬出し、一定期間保管し、その後に売却したり、廃棄することになります。また、一定の場合には、即時売却を行うこともあります。しかし、北海道の冬に明渡しを行う場合は、問題が生じることがあります。

 例えば、明渡しの対象である土地上に動産が残置されているが、その上に雪が深く積もり固まってしまい、動産を認識することができないような場合や、物理的に動産を搬出することが困難であるような場合には、明渡しの執行が不能となってしまうことがあります。

 もしこのような事態になってしまった場合は、雪が溶け、動産を認識し、物理的に動産を搬出することができるようになるのを待って、改めて明渡しの執行を行わなければなりません。そのため、賃料未払のまま、賃料数か月に亘って待たなければならないということもあります。

(物理的に動産を搬出することが困難である場合のイメージ図)

5.予納金の納付

 最後に、三点目は、明渡しの執行にあたっての予納金です。もし借主が自発的に物件の明渡しをしない場合は、執行官が強制的に物件の占有を解いたうえで、明渡しを行うことになります。

 明渡しの執行を行う場合は、事前に予納金を納付する必要があります。法律上は、執行官が明渡しを行いますが、実際には、解錠業者や引越業者、倉庫業者といった専門の業者が執行官の指揮のもと、補助業務を行います。そして、裁判所や補助業者は、当然明渡し執行のための費用を負担してくれるわけではないので、不動産オーナーが負担しなければなりません。

 では、予納金は、一体どのくらいの金額になるのでしょうか。例えば、札幌市内での単身の引越しの相場を考えると、閑散期であれば10万円もあればできるのではないでしょうか。

 実は、明確な基準があるわけではないのですが、一般的には少なくとも50万円の予納金の納付が必要になると言われています。また、物件の面積が広い場合や、物件内に残置物がある場合は、これに応じて高額になります。

 当職が経験した事案では、2LDKのマンションで、物件内がゴミ屋敷のような状態になっていた事案で、約200万円もの予納金の納付を命じられたことがありました。また、1000坪程度の土地とプレハブ事務所で、事業に関する動産が多数残置されていた事案で、500万円を優に超える金額の予納金の納付を求められたこともありました。


6.最後に

 今回は、「他人事ではない?!不動産にまつわる怖い話」の第2回として、不動産の明渡しをテーマに、怖い話をお送りいたしました。物件の明渡しの他にも、未払賃料の回収もあるので、経済的な負担や時間的な負担は大きく、小規模な不動産オーナーには大きな影響が生じかねません。もし賃料未払が発生した場合は、速やかに弁護士に相談し、早期の解決を図るようにしてください。

弁護士 田上 淳一