1.はじめに
今回は、交通事故に関する諸問題について説明したいと思います。
これまで数多くの交通事故に関する法律相談や示談交渉等の対応に取り組んできましたが、その中で、被害に遭われたクライアントからは、「保険会社から提示された示談金は妥当ですか?」と質問されることが多くありました。
特に、「慰謝料」の金額の相場が分からないとの内容です。
結論から申し上げると、これまでの私の経験上、相手方保険会社から提示された慰謝料額は妥当な額ではないと判断することが多いように思います。
万が一、交通事故の被害に遭われた場合や友人や知人に相談された場合に備え、本稿の内容を頭の片隅に置いてもらえますと幸いです。
*今回は、傷害慰謝料についての話であり、後遺障害等級が認定された場合の後遺障害慰謝料は別ですので、ご留意ください。
2.慰謝料の目安
慰謝料とは、精神的苦痛を被った場合に認められる賠償の一種です(民法710条)。しかし、民法には、慰謝料の具体的な算定方法は明記されていません。
精神的苦痛の程度は、個別具体的事情により異なりますので、慰謝料の相場や目安というのも存在しないようにも思えます。
しかし、我が国の人身傷害の事故案件は毎年優に数十万件を突破しており、システマティックに対応せざる得ない側面もありません。このような経緯で過去の裁判例等を分析し、作成されたのが弁護士基準というものです。
この基準は、「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準上巻(基準編)」(以下「赤い本」といいます。)に記載されており、裁判手続においても参考にされています。
我々弁護士は、赤い本の基準を目安として、相手方保険会社と交渉することがほとんどかと思います。
以下、赤い本(2026(令和8年))の内容を紹介します。
【別表Ⅰの図】

【別表Ⅱの図】

*赤い本基準では、傷害慰謝料表があり、入院期間と通院期間の交差する部分の額を一応の目安としています。
*赤い本では、基準表が2種類あり、他覚所見のないむち打ち症の場合は別表Ⅱを用い、その他の症状がない場合は別表Ⅰを用いると案内されています。
3.実際の解決事例
以下では、私が担当した案件にて、実際に赤い本の基準を参考にして保険会社と交渉した結果、慰謝料が増額したケースの一部を紹介します。
保険会社からの提示額と実際の解決額では、慰謝料額に大きな開きが出てくる事例もあります。
【ケース1(通院期間15日、実通院日数1日)】
保険会社提示額 約2万円
解決額 約14万円
【ケース2(通院期間129日、実通院日数41日)】
保険会社提示額 約35万円
解決額 約70万円
【ケース3(通院期間343日、実通院日数12日)】
保険会社提示額 約31万円
解決額 約137万円
4.最後に
万が一、交通事故の被害に遭われ、相手方保険会社から示談書が提示された場合には、本稿の内容を思い出し、是非弁護士にご相談ください。
ご自身が加入している保険に弁護士特約が付帯されていれば、原則として費用負担なく、弁護士に対応を依頼できますので、その点も併せて紹介させていただきます。
弁護士 日西 健仁
