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マンションを相続したときはご注意を!

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1.はじめに/マンション住まいの高齢者の増加

 内閣府が公表している高齢社会白書の統計によると、65歳以上の一人暮らしの割合は全体の約2割(令和2年時点)に上り、今後も高齢者の一人暮らしの割合は増加していくと予想されています。
 また、マンションの長寿命化に伴い、全国の分譲マンションの総戸数も増加し続けており、マンションで一人暮らしをする高齢者の方も増えていると言われています。
 このような背景もあり、最近、当事務所でも「疎遠だった親族が亡くなり、突然、マンション管理組合から滞納金の請求がきた」という相談を受けることがあります。
 マンションに住んでいた親族が亡くなり、その相続人になる場合には、特に注意しておかなければならない「落とし穴」がありますので、今回のコラムでは、注意点や対処方法をご説明させていただきます。
 なお、本コラムでご説明する「マンション」とは、賃貸マンションではなく、分譲マンション(親族自身がマンションの居室を所有する場合)を指していますので、ご留意ください。

2.落とし穴(1)/膨らみ続ける管理費・修繕積立金の滞納額

 相続財産に不動産が含まれる場合、遺産の帰属が決まるまでの間も、固定資産税等の税金が発生し続けるという問題がありますが、マンションの居室が相続財産に含まれる場合には、税金に加えて「管理費」や「修繕積立金」も発生し続けることに注意が必要です。
 たまに「私はマンションに住んでいないのだから、管理費等を支払う必要はないのでは?」「まだ遺産分割がまとまっていないのだから、管理費等の支払を猶予してくれるのでは?」という質問を受けることもあります。
 しかし、実際にマンションに住んでいない場合でも、また、マンションを誰が相続するのかが決まっていない間も、相続人には、マンションの管理規約に定められた管理費等を支払う義務が日々発生し続けることになります。

3.落とし穴(2)/支払義務は管理費等の元本だけでは済まされない

 国土交通省が公表している「マンション標準管理規約」では、マンションの居室の所有者(管理組合の組合員)が管理費等を滞納した場合、その元本に加えて、「遅延損害金」や「違約金としての弁護士費用」等を加算して請求できるという内容になっています。
 実際、多くのマンションの管理規約では、上記の標準管理規約を参考にして、法定利率を超える利率(14.6%など)の遅延損害金や、滞納金の請求対応に要した弁護士費用を加算して請求できるという定めが置かれています。

【マンション標準管理規約(単棟型):第60条第2項】

 組合員が前項の期日までに納入すべき金額を納入しない場合には、管理組合は、その未払金額について、年利○%の遅延損害金と、違約金としての弁護士費用等並びに督促及び徴収の諸費用を加算して、その組合員に対して請求することができる。

 ここで注意が必要な点として、加算される「違約金としての弁護士費用」には、滞納額の1割等の制限はなく、不相当に高額でない限り、管理組合が滞納金の請求対応のために負担した弁護士費用の「実費」について支払義務を負うことです。
 具体的な事情にもよりますが、管理組合が弁護士に対応を依頼せざるを得ないような状況に至った場合には、相続人の調査や通知書の作成等のために、ある程度まとまった費用を負担している場合が多いです。
 そのため、仮に、管理費等の元本自体は少額であっても、そこに加算される弁護士費用や遅延損害金が元本以上に高額になることがあり、マンションの居室を相続した場合には、これらの費用も含めて支払義務を負うことになります。

4.落とし穴(3)/最終的には競売で売却されるおそれもある

 マンションの住人が亡くなったものの、その相続人が滞納金の支払に応じない場合、管理組合側としては、管理会社を通じた電話や書面による督促、弁護士を通じた内容証明郵便による督促、裁判上の手続による請求など段階的に対応を強めていくのが一般的です。
 それでも支払に応じずに放置した場合には、最終的に「強制的に居室が競売にかけられて売却されてしまう」可能性がある点に注意が必要です。
 マンションには多くの住民が居住し、設備等の共用部分を共有する特殊な建物ですので、「建物の区分所有等に関する法律」(区分所有法)という法律で、住民の「共同の利益に反する行為」が禁止されていたり、管理費等の滞納があった場合に管理組合に強力な権利を付与されています。
 上記の段階的な対応の結果、最終的に競売手続が進められてしまい、自ら居住したり、他人に賃貸するなどして有効活用しようとしていたマンションを強制的に手放すことになってしまったり、一般的な不動産取引市場の相場よりも低廉な金額で競り落とされてしまう可能性もあります。

5.対処方法

(1)放置をせずに話し合いに対応する

 管理組合から何らかの督促や連絡があった場合には、無視や放置をせずに、まずは、管理組合やその委託を受けた管理会社に連絡し、滞納金の有無や金額の現状確認を行った上で、今後の遺産分割の状況次第で、任意に支払う可能性があることも伝えるとよいと考えます。
 管理組合側としては、相続人と連絡がつかない場合には、上記のとおり、段階的に対応を強め、弁護士に対応を一任することがあります。その場合には、管理費等の元本に加えて、弁護士費用や遅延損害金等の費用も加算され、最終的な支払義務が膨らむおそれがありますので、管理組合との話し合いに応じることから始めるべきです。

(2)マンションだけでも早期に遺産分割することも視野に入れる

 マンションの居室の価値を含めても相続財産が全体としてマイナスだと思われる場合等では、専門家にも意見を聞いた上で、相続放棄の手続を行うことも検討すべきです。
 一方で、相続放棄を行わずに相続人として遺産を承継する場合には、相続人全員との間で遺産分割協議を行い、できるだけ早期にマンションの居室の所有者や滞納状態にある管理費等の支払義務について取り決めるのが望ましいです。
 ただ、遺産分割の話し合いは一筋縄ではいかず、時間をかけてもなかなか話し合いがまとまらないことも珍しくありません。
 このような場合には、「遺産分割ができない間にも、管理費等や管理組合側の弁護士費用が膨らみ続けてしまう」という、マンション特有の問題があることを相続人間で共有した上で、マンションの居室だけでも優先的に遺産分割を行うこともご検討ください。
 ただし、このようにマンションの居室のみを対象とした一部分割を行う場合には、相続人間で共通認識を形成しながら進めなければ、後日、残りの財産の遺産分割の際に、先行する一部分割をどのように考慮するか(マンションの居室の価値をどのように評価するかなど)をめぐり、思わぬトラブルにつながるおそれもありますので、専門家に相談しながら対応を進めていただければと思います。

6.おわりに

 今回のコラムでは、マンションの居室を相続した場合の「落とし穴」と「対処方法」をご説明させていただきました。
 マンションの居室を相続した「相続人」の立場から注意すべき点を説明しましたが、同様の問題は、マンションの「管理組合」や「管理会社」の側でも直面する問題です。
 当事務所では、マンションの管理に関する法的問題全般について対応できますので、何かお困りの際にはお気軽にご相談いただければと思います。

弁護士 三本竹 寛