1.はじめに
前回のコラムでは、情報流通プラットフォーム対処法(以下「法」といいます)施行後の削除実務について解説いたしました。
今回のコラムでは、法に基づく削除申請について、国が出している違法情報ガイドライン等の資料を踏まえ、コツやポイントをお伝えできればと存じます。
改めて、同法の全体像は以下のとおりです。

実際の相談では、削除の申出をしたいが、どの権利が侵害されていると考えるべきかが分からず、申出をせずに止まってしまうケースが多く見られます。
このようなケースに関し、国は、指定事業者に対し削除基準の策定・公表を求めると同時に、削除すべき情報を分類・例示する「違法情報ガイドライン」を公表しています。削除申出の理由付けを組み立てる際、この分類が参考になります。URLは以下のとおりです。
https://www.soumu.go.jp/main_content/001032102.pdf
2.違法情報ガイドライン
(1)概要
違法情報ガイドラインは、指定事業者が削除基準を作る際に、①権利侵害情報と②法令違反等の情報をどう整理するかを例示と裁判例の参照付きで示しています。さらに、年次の運用状況を公表する場面でも、申出理由等を区分して公表する場面があるため、可能な限りこの分類に沿って整理するよう求めています。
(2)分類
削除申出の理由付けは、以下の2種類に分類されます。
A:権利侵害型 例:(名誉毀損・侮辱・著作権等)
B:法令違反型 例:(わいせつ・薬物・闇バイト募集等)
この区分を踏まえ、どの類型に該当するかを検討します。
3.代表的な類型における削除申請のポイント
実際の相談では、A(権利侵害型)の類型が大部分を占めます。
その中でも、頻出する代表的な3つの類型について簡潔に説明します。
(1)名誉毀損
名誉毀損とは、人の社会的評価を低下させる表現をいいます。社会的評価が低下するかどうかは、一般読者の通常の注意と読み方を基準に判断されます。
また、当該表現が特定の個人を指していること(同定可能性)が必要です。氏名が明示されていなくても、周辺事情から誰を指しているか推知できる場合には、この要件を満たします。
もっとも、公共性があり、専ら公益を図る目的でなされた表現であって、摘示された事実が真実である場合、または真実と信じる相当の理由がある場合には、名誉毀損は成立しません。
【削除申出のポイント】
名誉毀損を理由に削除申出を行う場合には、①どの部分が社会的評価を低下させるのか、②投稿から誰を指していると読めるのか(同定可能性)を具体的に示すことが重要です。
あわせて、投稿のURLやスクリーンショットの記録、前後の文脈など、一般読者の読み方を前提とした資料を整理して提出すると、判断しやすくなります。
さらに、公共性がない記載(不倫の暴露等)や虚偽の情報が記載されている場合には、これらに関する事情も記載した方がよいです。
(2)名誉感情侵害(侮辱)
侮辱的な表現については、文言それ自体の侮辱性の程度、根拠が示されていない単なる意見や感想にとどまるかどうか、侮辱的な文言の数や投稿回数、投稿の経緯、表現の具体性や意味内容の明確さなどを総合的に考慮して判断されます。
これらを踏まえ、社会通念上許される限度を超える侮辱行為と認められる場合には、名誉感情侵害となります。
【削除申出のポイント】
名誉感情侵害を理由とする場合は、単に傷ついた旨を述べるのではなく、①どの文言が侮辱に当たるのか、②それがどの程度・どの回数投稿されているのか、③どのような経緯で投稿されたのかを具体的に記載することが重要です。
また、投稿の文言のみでなく、前後の文脈や投稿の履歴を示し、継続性や執拗性があることを明らかにできれば、社会通念上許容される範囲を超えることの説明につながる場合もあります。
特に、根拠のない断定的な非難や人格攻撃が繰り返されている場合には、その点を指摘すると、事業者側も判断がしやすくなります。
(3)プライバシー侵害
プライバシーとして保護される情報とは、私生活上の事実、または私生活上の事実として受け取られるおそれのある情報であって、一般人の感受性を基準に当該本人の立場に立った場合に他人に開示されることを望まないと認められ、かつ一般にはまだ知られていない情報をいいます。
そして、このような情報については、公開されない法的利益と、公表する側の理由とを比較衡量し、公開されない利益が優越する場合に、プライバシー侵害が成立します。
【削除申出のポイント】
プライバシー侵害を理由とする場合は、まず、当該情報がどのような私生活上の事実に当たるのか、なぜ一般には知られていない情報といえるのかを具体的に示すことが重要です。
そのうえで、公開されることによりどのような不利益や危険が生じるのかを整理し、情報を公表する側にどのような正当な理由があるのかを踏まえてもなお、公開されない利益が優越することを説明することが有効です。
特に、住所や家族関係、勤務先の詳細、健康情報など、生活領域に密接に関わる情報については、その秘匿の必要性を具体的に指摘することで、事業者側が判断をしやすくなります。
4.おわりに
法は、透明性を確保しつつ削除対応を迅速に行うための制度ですが、削除基準の判断主体はあくまで事業者であり、申出の成否は理由付けと提出する資料の質に左右されます。
削除申出で何を記載するか迷った場合には、違法情報ガイドラインの分類に沿って争点を整理し、提出資料を整えるだけで見通しが大きく変わることがあります。
また、ネット上の違法・有害情報の対応については、総務省の委託事業として「違法・有害情報相談センター」も案内されていますので、必要に応じてご確認ください。
(URL)
https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/fukushihoken/r7-jinken-sns-jinkensingai.html
インターネット上の権利侵害は、放置すると被害が拡散しやすい一方、初動の整理次第で解決の見通しが大きく変わります。
困っている場合は、早い段階で専門家に相談し、必要な証拠の確保と手続選択を含めて方針を立てることをお勧めします。
なお、インターネット上の書き込みに関する相談については、以下の画像のとおり、総務省HPにおいて相談や通報の窓口を整理して公表していますので、ご参照ください。

弁護士 白石 森生
