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交通事故に関する諸問題 ~主婦も休業損害を請求できる?~

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1.はじめに

 前回に続き、交通事故に関する諸問題について説明したいと思います。
 今回は、交通事故の際の「休業損害」、とりわけ主婦の休業損害に関して紹介したいと思います。
 交通事故の相談時、被害に遭われたクライアントからは、保険会社から提示された示談書の確認を求められることが多いのですが、被害者が専業主婦の方である場合(専業主婦)や、事故後もパート勤務等の仕事を続けながら家事を行っている方の場合(兼業主婦)は、相手方保険会社から休業損害を前提とした示談金の提示はほとんど見受けられません。
 保険会社は、賠償金を支払う立場にあるのですから、自ら積極的に休業損害を認定することは稀のように思います。他方で、被害に遭われた方も、専業主婦等の場合は、現実に家事労働に対する給与収入を得ていたものでなく、交通事故による収入減少は観念できないとの考えから、休業損害を請求できるという発想にはならないのかもしれません。

2.最高裁判決

 しかし、最高裁昭和50年7月8日判決は、以下のとおり判断し、主婦業としての休業損害を認めています。

「妻の家事労働が財産上の利益を生ずるものであり、これを金銭的に評価することが不可能といえないことは、当裁判所判例(昭和四四年(オ)第五九四号同四九年七月一九日第二小法廷判決・民集二八巻五号八七二頁)の示すとおりである。これと同旨の見解に立つて、被上告人が本件事故による負傷のため家事労働に従事することができなかつた期間について財産上の損害を被つたものとした原審の判断は、正当として是認することができ」る。

 これは、家事労働も、家族以外の者に頼めば一定の報酬の支払いをせねばならず、家族関係の存在ゆえに、金銭による対価支払いが行われていると考えられるからです。


3.兼業主婦の場合

 家事に従事しつつ、パートや事業によって収入を得ている場合は、現実の収入額と女性労働者の平均賃金額のいずれか高い方を基礎として、休業損害が算出されます。つまり、女性労働者の平均賃金額より現実の収入が低い場合は、家事労働について休業損害を請求できることになります。
*家事従事者の収入額
 専業主婦としての休業損害を算定する際の基礎収入額としては、「女性労働者の平均賃金(賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計の全年齢平均の賃金)」が用いられることが多いです。
2026年では、専業主婦の年収は419万4400円が基礎とされます。

(出典)厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(賃金センサス)令和6年 第1巻第1表(産業計・企業規模計)抜粋・年収額付(原本468~471頁)
(注)年収額=きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額。


4.実際の解決事例

 以下では、私が、実際に保険会社と交渉した休業損害に関する事例の一部を紹介します。
 最初の保険会社からの提示は「0円」でしたが、弁護士が代理人として対応した場合は一定の休業損害が認定されています。
*交通事故の受傷が家事労働に及ぼす個別具体的な影響によって、休業損害額は異なりますので、ご留意ください。

【ケース1(通院期間約5か月、専業主婦)】

保険会社提示額  0万円
解決額      約31万円


【ケース2(通院期間約7か月、専業主婦)】

保険会社提示額  0万円
解決額      約115万円

【ケース3(通院期間約4か月、兼業主婦)】

保険会社提示額  0万円
解決額      約36万円


5.最後に

 専業主婦や兼業主婦の方が交通事故の被害に遭われた場合には、本稿の内容を思い出し、是非弁護士にご相談ください。
 前回も説明させていただきましたが、ご自身が加入している保険に弁護士特約が付帯されていれば、原則として費用負担なく、弁護士に対応を依頼できますので、その点も併せて紹介させていただきます。

弁護士 日西 健仁