1. 公布日・施行日
公布日:2025年6月11日
施行日:2026年10月1日
※「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(以下「改正法」といいます)が改正されます。
2. 知っておくべき主な改正ポイント
① 求職者等セクハラとは何か
② 事業主の講ずべき措置
3. 求職者等セクハラとは
(1)求職者等セクハラの定義
- ア 意義
- 求職者等セクハラとは「事業主が雇用する労働者による性的な言動により求職者等の求職活動等が阻害されるもの」を指します(厚生労働省告示第五十二号:事業主が求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(以下「本指針」といいます))。
- 以下、要件を詳しく説明します。
- イ 「事業主が雇用する労働者」
- セクハラの加害者となる「労働者」には正規雇用労働者のみならず、パートタイム労働者、派遣社員等の非正規雇用労働者も含まれます。
また、派遣労働者については派遣元事業主のみならず派遣役務の提供を受ける者も事業主とみなされるため、事業主と同様に以下「4」で述べる措置を講ずることが必要となります。 - ウ 「性的な言動」
「性的な言動」には、以下に記載する性的な内容の発言及び性的な行動が含まれます。 - ・性的な事実関係を尋ねること
- ・性的な内容の情報を意図的に流布すること
- ・性的な関係の強要や、不必要な身体接触、わいせつな図画を配布すること等
- エ 「求職者等」
「求職者等」には事業主の実施する採用活動に参加する者のみならず、教育実習や看護実習その他の実習を受ける者も含まれます。 - オ 「求職活動等」
- 求職者が行う求職活動や求職者に類する者が行う職業の選択に資する活動を指し、例示として以下のものが含まれるとされています。なお、求職活動等はSNS等のオンラインで行われるものも含まれます。
- ・企業の採用面接への参加
- ・就職説明会への参加
- ・企業の雇用する労働者への訪問
- ・インターンシップへの参加
- ・教育実習、看護実習等の受講
(2)求職者等セクハラ等の具体例
求職者等セクハラは、当該セクハラによって求職者等の求職活動等が阻害され、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等の看過できない程度の支障が生じることを指し、その状況は多様ですが、具体例として、以下のものが挙げられています。
- ・インターンシップで労働者が求職者等に性的な冗談やからかいを意図的かつ継続的に行ったため、当該求職者等が苦痛に感じてインターンシップ中の活動に手がつかないこと
- ・面接中、面接官を務める労働者から性的な事実に関する質問を受け、求職者が苦痛に感じてその求職活動の意欲が低下していること
- ・インターンシップ中に労働者が求職者等を執拗に私的な食事に誘い、当該求職者等が苦痛に感じて求職活動等の意欲が低下していること
4.事業主が講ずべき措置
(1)事業主の方針等の明確化及びその周知(本指針第4項(1))
具体的には以下の措置を講じる必要があります。
- ① 求職者等セクハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者へ周知・啓発すること
- ② 求職者等セクハラを行った者については厳正に対処する旨の方針や就業規則を規定し、管理監督者を含む労働者へ周知・啓発すること
- ③ 求職活動等に関するルール(※)をあらかじめ明確化し、労働者及び求職者等に周知・啓発すること
- ※一例
- 労働者に対して面談時間及び場所の指定、実施体制並びにやり取りに用いるSNSの指定その他求職者等と面談を行う際の規則を定めて、周知・啓発するための講習等を実施すること。
- また、求職者等に対しては、上記規則を踏まえ、面談等に関する留意事項をホームページやパンフレット等の広報手段を用いて周知等すること。
(2)相談体制の整備(本指針第4項(2))
- ① 相談窓口をあらかじめ定め、求職者等に周知すること
- ② 上記①の相談窓口担当者が適切に対応できるようにすること(*)
- *相談窓口の担当者に対して研修を行うことや、対応マニュアルを作成することが考えられます。
(3)事後の迅速かつ適切な対応(本指針第4項(3))
- ① 事実関係を確認すること
- ② 被害者に対する配慮のための措置を行うこと
- ③ 行為者に対する措置を適切に行うこと
- ④ 再発防止に向けた措置を講ずること
(4)プライバシーへの配慮(本指針第4項(4))
- ① 相談者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、労働者及び求職者等に周知すること
- ② 労働者が事実関係の確認等に協力したこと等を理由として解雇その他不利益な取り扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること
5.事業主が義務に違反した場合
(1)指導・勧告等
事業主が「4」で述べた義務に違反した場合、厚生労働大臣から報告を求められたり、助言や指導、勧告の対象になる可能性があります(改正法35条1項)。
(2)過料
厚生労働大臣から(1)の報告を求められたにもかかわらず、報告をしなかったり虚偽の報告をした場合には、20万円以下の過料の対象となります(改正法39条)。
(3)公表
厚生労働大臣から(1)の勧告がなされた事業主が、勧告に従わなかった場合には、その旨が公表される可能性があります(改正法36条)。
6.まとめ
今回は求職者等セクハラを防止するための事業主がとるべき対応の義務化について紹介しました。今までセクハラ防止のための措置をとられていた事業主も「4」で述べたとおり、求職活動等に関するルールの明確化・周知及び求職者への相談体制の周知等が必要となります。
会社の体制等の個別具体的な事情により、対応方法は異なりますので、対応にあたってお困りの際は、当事務所にご相談ください。
弁護士 森谷 拓朗 弁護士 澤口 桜子
