前回に続き、インターネット時代の著作権侵害事案を紹介します。
1.埋め込み形式の動画
(1)前提・問題の所在
インターネットサイトを見ていると、開いているページの中に動画が含まれている場合があります。
それらの動画は、当該ページから送信されている場合もあれば、実は当該ページからの送信ではなく、YouTubeなどの他のサイトの動画が自身(ユーザー)のパソコンに送信され、自身のパソコン上で、開いているページの内容と、送信された動画が併せて表示される場合もあります。
下のサンプル画像は北海道テレビ放送(株)のホームページからの引用です。左下に「見る YouTube」との記載があるように、動画そのものはYouTubeに存在しており、真ん中の赤い再生ボタンを押すと、YouTubeに存在する動画がユーザーのところで再生されます。
つまり、このホームページ自体に動画があるのではなく、YouTubeの動画へ導くためのコード(指令)が記載されているにすぎません。

上記サンプルは、ホームページの運営者(情報発信者)と、動画の著作権者がいずれも北海道テレビ放送(株)ですので何の問題もありませんが、サイトによっては他者が著作権を有する動画を自身のサイト上で再生できるように設定(=コードを記載)していることがあります。
ホームページで情報発信している者(Aとします)が、YouTube等から他者(Bとします)の動画(著作物)をダウンロードし、それをA自身のホームページで公開すれば、明らかな著作権侵害(複製権、公衆送信権等の侵害)となります。しかし、外形的には、ダウンロードして自身のサイトで送信した場合も、YouTube等へ導く設定をしただけの場合も、Aのサイト上でBの動画が公開されているかのように見えます。そうすると、動画を複製等することなく、YouTube等へ導く設定をする場合にも著作権侵害となるのでしょうか。
(2)裁判所の判断(大阪地裁平成25年6月20日判決)
裁判になった事案では、原告が「ニコニコ動画」にアップロードした動画を、被告が自身のサイトの記事中で視聴できるように、当該動画へ導く設定(=コードを記載)をし、視聴したユーザーがコメントできるようになっていました。なお、動画の内容は、原告が、カメラ等を持参し、自身が上半身に着衣をせず(頭に猫耳状の飾りと首に首輪状の飾りのみ)、大阪市内のマクドナルド店に入店する模様や、原告自身が店員や警察官と対応する様子等を撮影したものでした。
原告は、動画が視聴できるようになっていることについて著作権(自動公衆送信権及び送信可能化権の侵害)、コメントで原告が非難されていることについて名誉毀損等を主張しました。
裁判所は、まず、本件動画のデータは、被告のウェブサイトのサーバに保存されたわけではなく、閲覧者が、記事の上部にある動画再生ボタンをクリックした場合も、被告のウェブサイトのサーバを経ずに、「ニコニコ動画」のサーバから、直接閲覧者へ送信されたものとしました。そして、閲覧者の端末(パソコンやスマホ等)上では、リンク元である本件ウェブサイト上で本件動画を視聴できる状態に置かれていたとはいえ、本件動画のデータを端末に送信する主体はあくまで「ニコニコ動画」の管理者であり、被告がこれを送信していたわけではないとして、本件動画を「自動公衆送信」をした(法2条1項9号の4)、あるいはその準備段階の行為である「送信可能化」(法2条1項9号の5)をしたとは認められないと結論付けました。
2.リツイート
(1)前提
X(旧twitter)のツイート(現在は「ポスト」と呼ばれる投稿のこと)では、リツイート(現在の「リポスト」)という機能があり、ツイートを閲覧した人が、そのツイートを広める(拡散)することができようになっています。Xを全く見たことが無いという人は多くはないかもしれませんが、簡単に説明すると、Aのツイートは、基本的には誰でも見ることができるのですが、実際にはAと関わりのある人くらいしか目にすることはありません。Aと関わりのある人が10人だとすると、その範囲でツイートが見られるだけです。そこで、Aと関わりのあるBがAのツイートをリツイートすると、Aと関わりがないものの、Bと関わりのある人が目にすることになります。その結果、Aだけでツイートしていたときよりも、多くの人が目にするようになるので、「拡散」と言われています。
下のサンプルは、NHKがXでポスト(ツイート)したものを、見た人がリポスト(リツイート)した例です(一番上に「●●さんがリポスト」と記載されています)。

ある人(Aとします)が、他人(Cとします)が著作権を有する写真や動画をXに投稿した場合、それは当然に著作権侵害となります。そのAの投稿を、Bがリツイート(リポスト)した場合には、Bは、Aの投稿から写真又は動画をダウンロードして、B自身がその写真又は動画をアップロードしたわけではありません。リポストすることで、Bの投稿内にAの投稿が表示されるようにしただけです。
しかし、外形的には、Bの行為によって、Cが著作権を有する写真又は動画が多くの人の目に触れる状態になっています。そのようなリツイートも著作権侵害になるのでしょうか。
(2)裁判所の判断(知財高裁平成30年4月25日判決)
原告(上記のC)が撮影した写真を自身のウェブサイトに掲載したところ、Aがそれをダウンロードし、twitter(当時)にその画像をツイートして掲載しました。更に、BがAのツイートをリツイートしたところ、CがA、Bを特定するためにtwitter社に発信者情報の開示を求めた裁判を提起しました。
原告は、Bのリツイート行為について、著作権侵害については、公衆送信権(著作権法23条1項)及び複製権(著作権法21条)の侵害を主張していました。
裁判所は、Bのリツイートの情報自体は、著作権を侵害する情報ではなく、Bのリツイートによって表示されるCの写真を公衆送信している当該URLの開設者(元のツイートを行ったA)であってBではないとして、公衆送信権侵害を否定しました。また、リツイート行為によって、Aのツイートが表示されるにすぎず、リツイートすることで、Aのツイート中のCの写真が複製されているとはいえないとして、複製権侵害も否定しました。
なお、知財高裁の判決では、著作者人格権侵害は認めており(本記事は著作権に限定したため割愛)、それらについては最高裁まで争われましたが、著作権侵害の点については最高裁の争点とはなっておりません。
3.最後に
上記2件は、いずれも、動画や写真を複製し、それをネット上に送信するのではなく、他の場所(1の場合は著作権者自身の動画、2の場合は著作権者の写真を無断複製したツイート)へ導く情報(いわゆる「リンク」)を送信した行為について、著作権侵害とはならないと判断されています。しかしながら、似たような事案においてリンクを貼る行為について著作権侵害を認めている裁判例もあります。インターネット上での著作権トラブルは今後も増えていくと思われ、同様の事案についての今後の裁判所の判断に注目していきたいと思います。
弁護士・弁理士 安藤 誠悟
